The previous night of the world revolution5~R.D.~
「お金持ちなんだね、ルーチェス君は」

ベッドにうつ伏せに寝そべりながら、セカイさんが言った。

「お金持ち…?まぁ、人並み以上ではありますかね」

「へぇ~。良いとこのお坊っちゃん?」

「えぇ。良いとこのお坊っちゃんです」

ごめんなさい。お金に苦労したことなくて。

金持ちのボンボンです。

「良いなぁ。今までお客さんから色々プレゼントもらったことあるけど、こんなに豪華なのは初めてだよ」

「そうなんですか?」

以前は確か…キャバクラ勤めだったんだっけ?

そこでも貢ぎ物をもらうことはあったと。

「うん。凄いだろ~みたいな顔して渡してくる癖に、売ったら二束三文の安物なの。笑っちゃうでしょ」

え。

「ということは、それも売られる運命…?」

渡したエンゲージリングを、即行で売られる悲しみ。

「あはは。これは売らないよ。売るには勿体ないくらい素敵だもん」

「安物だったら売られてたんですか?」

「ううん。他のお客さんからもらったものだったら、売っちゃうけど…。ルーチェス君からのプレゼントは売らない」

「…」

何処まで信じて良いのやら。

別に売りたいのなら、売ってもらっても構わない。

それでセカイさんの生活の糧になるのなら。

「他のお客さんにも、同じこと言ってません?」

「言わないよ。酷いな~。ルーチェス君は特別なんだよ」

「何で?」

「未来の旦那さん、だからかな?」

…はぁ、成程。

すると、セカイさんはむくっと起き上がって、僕の首に両腕を回した。

…香水の、良い匂いがする。

「…溜まってない?しても良いよ」

「ここ、本番は禁止でしょう?」

ルレイア師匠に怒られるよ。規則違反だって。

「ルーチェス君は特別だから、良いの」

「それはありがとうございます。でも、僕は今夜…あなたに会えただけで、充分満足したので」

「えぇ~?良いの?」

何でちょっと残念そうなんだ。

「じゃあ、次会ったときに」

「分かった、次ね。また来てね?」

「来ますよ。絶対」

婚約者に会いに来ない理由が、何処にある。

また抜け出せるときがあったら、ここに来よう。
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