The previous night of the world revolution5~R.D.~
「ルーチェス君って、痩せっぽちだよね~。ちゃんと食べてる?」

セカイさんは、上半身裸の僕の横っ腹をつついた。

「食べてますよ?」

何せ、僕が一食でも食べなかったり、ちょっとでも食べる量が少なかったりしたら、栄養士やコック達が大騒ぎする始末。

嫌でも食べるしかない。

「本当~?いい加減なもの食べてるんじゃないの?カップ麺とか」

「…カップ麺…」

カップラーメン、って奴か。

「実は僕、食べたことないんですよ。カップ麺」

ファミレスのハンバーグとかは食べたことあるんだけど。

カップ麺は、まだ食べたことない。

あれ、美味しいの?

食べ物が入ってるのか、添加物が入ってるのか分からない食べ物のように見える。

「嘘。ルーチェス君って本当に良いところのお坊っちゃんなんだね」

「セカイさんは食べたことあるんですか?」

「昨日も食べたよ」

へぇ。

「確か、お湯入れるだけで出来るんですよね」

「そうだよ。便利で良いよ?私料理苦手だから、ついお惣菜とかカップ麺で済ませちゃうんだよね」

「料理、苦手なんですか?」

「うん」

即答。

余程苦手らしい。

「何でか分からないんだけどねー?食材が消し炭になったり、爆発したりするんだよねー」

それは最早料理ではない。

実験だ。

「ルーチェス君は、料理得意?」

「僕ですか?僕は…料理したことないんですよね」

「え、ないの?」

そうなのだ。

実は、料理したこと一回もない。

それどころか、厨房に立ったことすらない。

「えぇ~?ルーチェス君も料理出来ないの?」

「いや、やったことがないだけで、やってみれば意外に出来るかもしれませんよ?」

眠っていた才能が…開花するかも。

「僕まで料理苦手だったら、結婚したとき困りますね」

家政婦雇わなきゃならなくなってしまう。

それならそれでも構わないけど…。

「本当だね」

まぁ、人には得手不得手というものがある訳だから。

出来ないものは仕方ない。

まずはやってみよう。

考えてみれば、僕はバイオリンを弾いたり、何ならトロンボーンやコントラバスまで齧らされて。

茶道だの生け花だの絵画だの、色々やらされたけど。

料理はやったことないんだよな。

おかしな話だと思わないか?

一番生活に直結することを、何故無視していたのか。

「分かりました。ちょっと僕、料理に挑戦してみます」

「すご~い!ルーチェス君、頑張って。上手く出来たら、私にも食べさせてね」

「はい」

問題は、厨房に立たせてもらえるかどうかだが。

そこは、まぁ頑張らせてもらおう。

未来の家庭の為に。

「あと、カップ麺も食べてみます」

「あはは。食べたら感想聞かせてね」

こっちは、新しいチャレンジだな。
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