The previous night of the world revolution5~R.D.~
経験…経験じゃないのか?

経験じゃなかったら、何なんだ?

「何なんですか?」

「…笑顔だ」

笑顔?

「上手かろうが下手だろうが、愛情を込めて作ったものを、笑顔で食べてもらえる。掃除もまたしかり。『ありがとう』と感謝されるときの笑顔。その笑顔で、また次も頑張ろうと思える。そして、次第に上手くなっていくんだ」

「ほう…。まさに真理ですね」

…あぁ。

そういえばルリシヤの場合、今みたいに料理が上手になったのは、『セント・ニュクス』の年下の子供達に食べさせる為だったんもんな。

彼らの笑顔が、ルリシヤの努力の糧だったのだろう。

かく言う俺も、ルレイア達が喜んで食べてくれたら、嬉しいもんな。

経験より、笑顔…か。

ルリシヤの割には…まともなことを言ってる。

「失礼だなルルシー先輩。俺はいつも、まともなことしか言ってないぞ」

「お前はさっきから、読心術でも使えるのか?」

俺、口に出してないよな?

何で俺の心の中が丸聞こえなんだよ。

「そうですよルルシー!俺だって、いつもまともなことしか言ってませんよ」

「お前は駄目だ」

ルリシヤはまだ良い。

しかしルレイア、お前は駄目だ。

お前の場合、まともなことを言ってるときを探す方が大変だろうが。

「それに、ある程度やり甲斐がないとな。モチベーション維持の為に」

「確かに…。僕、自分の部屋しか掃除してないですけど、元々が綺麗なので、全然掃除のし甲斐がないんですよね」

皇太子の私室だからな。

チリの一つでも落ちてたら、掃除婦が大目玉食らうことになるだろう。

するとルリシヤは、ルーチェスの耳元で、何かをひそひそと呟いた。

…何を喋ってるんだ?

ルーチェスは、にっこりと答えた。

「ありがとうございます。参考にしますね」

「あぁ。大丈夫だ、きっと上手くなれる」

…?

よく分からないが、上手くなるのは良いことだ。
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