The previous night of the world revolution5~R.D.~
「お風呂場と、玄関、キッチン、掃除しておきました」

「…!?」

こいつ…今、何と言った?

ルリシヤ二世か?

「そ、掃除って…」

よく見ると。

確かに、キッチンがピッカピカになってる。

特に、油で汚れがちなガスコンロ周り。

換気扇まで、舐められるほど綺麗になってる。

い、いつの間に。

「ルリシヤさんが教えてくれたんですよ。『ルルシー先輩の家は、キッチン周りと浴室付近がそろそろ汚れてきてる頃だから、そこを重点的に掃除すると良い』って」

「あの野郎…!」

後輩に何を吹き込んでるんだ。

何故あいつは、俺の家の汚れまで把握してるんだよ。

余計なお世話だ。

お前も本気にするなよ。

皇太子だろお前。皇太子が換気扇の掃除って。

嫌じゃないのか?抵抗はないのか。

「嬉しいですか?喜びました?」

にこにこ、と尋ねてくるルーチェス。

「…」

ふざけんな、勝手に入ってくるな、今すぐ出てけ。

大体俺は、まだお前に気を許したつもりはない。

…と、言えたら良かったのだが。

…とてもじゃないけど、そんなことは言えない。

…笑顔…か。

「…喜んでるよ。ありがとう」

「…いえ!どういたしまして」

お前って、あれだな。

何て言うか、本当無邪気だよな。

「さぁ、朝食にしましょう。きっと美味しいですよ。ちゃんと味見しましたから」

「あぁ…」

少し前までの俺だったら、毒でも入ってるかも、と絶対に手をつけなかっただろうに。

そのときの俺は、毒が入ってるかもしれない、なんてことさえ思い付かなかった。

…それと、めちゃくちゃ美味しかった。
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