The previous night of the world revolution5~R.D.~

sideルレイア

──────…アイズが何者かに拉致されたなどと、知るよしもない俺は。

その頃、呑気にルルシーの執務室で時間を潰していた。

「うふふー。ルルシーとのペアリング~♪婚約指輪~♪」

「…ペアリングではあるが、婚約指輪ではないぞ」

「も~ルルシーったらシャイなんだから!」

「くっつくな!」

いけじゅ。

本当はくっつくの好きな癖に~。

だって婚約者だから!

「うふふ。ルルシーと婚約~♪フィアンセ~♪」

「だから婚約じゃないって…。はぁ、もう良い」

ルルシーは溜め息をついて、全てを諦めていた。

うんうん、それで良い。

俺とルルシーは永遠の愛を誓い合った婚約者。それで良いのだ。

これはもうゴールインの日も近い。

間もなく訪れるであろうその日を待ちわびて、思わずにゅふふな笑いが出てしまいそうになった、

そのとき。

「ふぇ~ん!ルレ公~!ルル公~!」

半泣きのアリューシャが、ルルシーの執務室に駆け込んできた。

「どうしたんですか?アリューシャ」

「騒がしいぞ。何だ?」

「アイ公が帰ってこねぇんだよ~!」

…?何だって?

アイズが帰ってこない?

「アリューシャがおやつ食べる時間には帰ってくるって言ったのに。帰ってこねぇの」

時計を見る。午後三時十分。

成程、アリューシャのおやつの時間、過ぎてる。

いつもならこの時間、アリューシャはアイズにもらったおやつを、もぐもぐ食べている時間だ。

それなのに、アイズがいないと。

「アイズは今日、どちらに仕事に行かれたんです?」

「なんか…。けーやくこーしんするんだって言ってた」

契約更新…。

俺とアイズの仕事はまるで種類が違うから、そんなに詳しくないのだが…。

アイズがわざわざ足を運ぶ相手。そしてこの時期に契約更新と言うと…。

「K企業ですかね?ルルシー」

「あぁ、多分そうだな」

ルルシーも同意見か。

「うん!アイ公もそんなこと言ってた!」

とのこと。

成程、K企業のお偉いさんに会いに行ったと。

「ちょっと遅れてるだけじゃないのか?帰り道が渋滞してるとか…」

「でも、それならアイ公連絡くれるはずだもん」

…確かに。

アイズのことだから、アリューシャのおやつの時間に間に合わないと分かれば、すぐアリューシャに連絡を入れるはずだ。

「お菓子の戸棚から好きなもの取って食べてて良いよ」とか。

電話でなくても、せめてメールの一通でも。

アイズに限って、アリューシャに連絡し忘れるということはあるまい。

アイズが普段どれだけアリューシャを可愛がっているかは、『青薔薇連合会』の者なら誰もが知るところ。

帰りが遅れているのに連絡をしないなんて、はっきり言って有り得ない。
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