The previous night of the world revolution5~R.D.~
「連絡、入ってないのか?」

「うん…」

アリューシャは何度も携帯を握り締めては、画面を確認していた。

でも、アリューシャの携帯に連絡はない。

…何か、嫌な予感がする。

アリューシャの手前、そんなことは言えないけど。

あのアイズが、連絡もなく行方を眩ませるなんて。

「こちらから連絡してみたか?」

「したよ。何回もしたけど、通じねぇの」

…ますますおかしい。

アリューシャからの電話を、アイズが無視するなんて。

「俺からも入れてみましょうか。ルルシー」

「あぁ、そうだな」

俺達は、それぞれ携帯を取り出した。

そのとき。

「…これ」

俺は、携帯に見覚えのない音声ファイルが届いているのを見つけた。

「どったのルレ公!?なんか見つけた!?」

「音声ファイルが入ってます。ちょっと聞くんで、静かにしててください」

そう言うと、アリューシャは両手で口を押さえた。

いや、呼吸はしててくれて大丈夫だから。声を出さないで欲しいだけで。

俺はイヤホンを耳につけ、音声ファイルを再生した。

「…」

アイズの声は聞こえない。ただ、ガサガサという物音が聞こえる。

これは…複数人の足音?

恐らくは四、五人…。K企業との取引に、そんな人数は必要ないはず。

その後。

僅かだが、かちゃり、と拳銃のようなものを構える音が聞こえた。

そして、声。

『あ…ら、れん…かい、んぶ…。…れんしあ、…つぁ…な』

アイズのものではない、野太い男の声。

微かに聞こえる音を組み合わせると、多分…。

「『青薔薇連合会』幹部、アイズレンシア・ルーレヴァンツァだな』とか、そんな感じ。

その後、更に足音が迫ってきたかと思うと、揉み合うような音がして、ガタンッ!バキンッ!と激しい音がした。

それ以降は、一切無音。

そこで音声ファイルが途切れた。

…携帯を壊された音だ。

間違いない。

「…ルルシー、アリューシャ」

「…何だ」

「…不味いことになったかもしれません」

アイズレンシアが、何者かに拉致された。

アリューシャと約束した時間になっても帰ってこない。連絡もつかない。

そして、この音声ファイル。

最早、そうとしか考えられない。
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