The previous night of the world revolution5~R.D.~
マリアンナ少女が帰った後。

レスリーが、にこにこしながら僕に話しかけてきた。

「如何でしたか?アルヴァール家のご息女は。大変品行方正で、人柄も良く、容姿もなかなかのものだと思いますが」

「僕、あの人嫌いです」

「…」

一刀両断。

「…な、何がお気に召さないと?」

「だってあの人…まるで作り物じゃないですか」

個性も何もない。

「正しくあるべき貴族の淑女」の人形が、喋って動いてるみたいなもの。

姉のアルティシアと同じだ。

自分の意思など何もなく、周囲に求められるままの姿を演じ、それが本当の自分だと勘違いしているお人形。

あんな人を妻になんて、冗談じゃない。

「殿下…。そんなに、風俗嬢の方が良いと仰るのですか」

「何か悪いですか?」

「…どうしてもと仰るのなら、正室に貴族の娘を迎え、風俗嬢の方は側室として迎えなされば良いではありませんか」

「…」

…側室。

つまり、愛人を囲え、と。

「国王に側室がいることなど、さして珍しくもありません。公式の場には出られませんが、内密に側室を作るくらいは、特に問題もありません。どうか…」

「…それは皮肉ですか、レスリー」

「…殿下?」

笑える話じゃないか。

この僕に、そんなことがよく言えたものだ。

「僕もあの淫乱な母のように、愛人を作れと?子供を作れと?僕が味わった苦しみを、僕の子供にも味わわせようと?」

「…!そのようなことはありません!殿下は、認知された正当なるベルガモット王家の嫡子であらせられます!」

どうだか。

何故、僕が姉のローゼリアや、アルティシアのように、一般に名前を知られていないのか。

その答えは、簡単だ。

僕が生まれたとき、不義の子ではないかと疑いを持たれたからである。
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