The previous night of the world revolution5~R.D.~
ベルガモット王家は、穢れている。
そんなこと、誰もが知っている。
隠し子である兄の存在。
姉のローゼリアの暴政。
腑抜けのアルティシア女王。
ローゼリア女王の前の国王、つまり僕の父親は、レスリーが僕に勧めたように、側室を囲っていた。
その間に生まれたのが、兄ゼフィランシアのような非嫡出子だ。
だが。
愛人を囲っていたのは、父だけではない。
皇太后たる母もまた、父に負けじと、愛人を作っていたのだ。
…と、言っても証拠がある訳ではない。
そうではないか、と噂されているだけだ。
聞くところによれば。
僕が母の腹に出来た丁度その頃、母の寝室に、頻繁にとある男性の使用人が出入りしていたという。
王妃の私室に、一介の使用人が、一体何の用があるのか。
それも、何度も頻繁に。
メイドなら、常に呼ばずとも近くに控えているのに。
しかも母は、その使用人の男が部屋に入るとき、傍に控えているメイド達を、わざわざ退室させたという。
二人きりになったその部屋で、何が行われていたのか。
想像に容易い。
しかもその頃、夫である国王は、とある病にかかって床に臥せっていることが多かったと言うではないか。
母を孕ませる義務を果たす元気と体力があったのか、甚だ疑問である。
そんな時期に、僕は母の腹に宿った。
しかもその後、妊娠が分かるなり、使用人の男は、まるで追い出されるかのように王宮から出ていった。
消息は分からない。
そんな事情があれば、誰だって、疑うのは当然ではないか。
王妃の腹に宿ったのは、本当に父王の子なのか?
母は、あくまでも夫の子であると言い張った。
父王もまた、自分も愛人を囲っていた引け目からか、妻を責められなかったのか。
自分の子ではないかもしれないと、疑いを抱きながらも、母を咎めることはしなかった。
あくまで嫡出子だと言い張り、そこまで言うならと、疑われながらもなし崩し的に嫡出子になった皇太子。
それが僕だ。
こんな人間が次期国王だと言うのだから、笑わせてくれる。
僕が風俗嬢を好きになったのは、間違いなく母の血だろうな。
「僕も母と同じになれと、そう言うんですね」
「そんなことはありません!殿下は認知された、正当なる…」
「えぇそうでしょう。そうでしょうね」
僕の存在など、所詮はそんなもの。
そんな危うくて、つまらないものなのだ。
このような穢れた血を、後世に残す価値があるとは思えない。
ましてや、貴族の家の娘と…。
「殿下…」
「…考えを改めるつもりは、ありませんから」
頑なだろうと、意固地だろうと、結構。
自分を偽って、あんな風に人形にされるより、ずっとマシだ。
そんなこと、誰もが知っている。
隠し子である兄の存在。
姉のローゼリアの暴政。
腑抜けのアルティシア女王。
ローゼリア女王の前の国王、つまり僕の父親は、レスリーが僕に勧めたように、側室を囲っていた。
その間に生まれたのが、兄ゼフィランシアのような非嫡出子だ。
だが。
愛人を囲っていたのは、父だけではない。
皇太后たる母もまた、父に負けじと、愛人を作っていたのだ。
…と、言っても証拠がある訳ではない。
そうではないか、と噂されているだけだ。
聞くところによれば。
僕が母の腹に出来た丁度その頃、母の寝室に、頻繁にとある男性の使用人が出入りしていたという。
王妃の私室に、一介の使用人が、一体何の用があるのか。
それも、何度も頻繁に。
メイドなら、常に呼ばずとも近くに控えているのに。
しかも母は、その使用人の男が部屋に入るとき、傍に控えているメイド達を、わざわざ退室させたという。
二人きりになったその部屋で、何が行われていたのか。
想像に容易い。
しかもその頃、夫である国王は、とある病にかかって床に臥せっていることが多かったと言うではないか。
母を孕ませる義務を果たす元気と体力があったのか、甚だ疑問である。
そんな時期に、僕は母の腹に宿った。
しかもその後、妊娠が分かるなり、使用人の男は、まるで追い出されるかのように王宮から出ていった。
消息は分からない。
そんな事情があれば、誰だって、疑うのは当然ではないか。
王妃の腹に宿ったのは、本当に父王の子なのか?
母は、あくまでも夫の子であると言い張った。
父王もまた、自分も愛人を囲っていた引け目からか、妻を責められなかったのか。
自分の子ではないかもしれないと、疑いを抱きながらも、母を咎めることはしなかった。
あくまで嫡出子だと言い張り、そこまで言うならと、疑われながらもなし崩し的に嫡出子になった皇太子。
それが僕だ。
こんな人間が次期国王だと言うのだから、笑わせてくれる。
僕が風俗嬢を好きになったのは、間違いなく母の血だろうな。
「僕も母と同じになれと、そう言うんですね」
「そんなことはありません!殿下は認知された、正当なる…」
「えぇそうでしょう。そうでしょうね」
僕の存在など、所詮はそんなもの。
そんな危うくて、つまらないものなのだ。
このような穢れた血を、後世に残す価値があるとは思えない。
ましてや、貴族の家の娘と…。
「殿下…」
「…考えを改めるつもりは、ありませんから」
頑なだろうと、意固地だろうと、結構。
自分を偽って、あんな風に人形にされるより、ずっとマシだ。