The previous night of the world revolution5~R.D.~
口が酸っぱくなるほど、もう何度も言っていることだが。

俺は平和的で、品行方正、かつ誠実で、穏和な大人である。

従って。

ここは平和的に、そして穏便に引き取り頂こう。

…脅迫によってな。

「…俺が、帰れって言ってるんですけど」

「い、いや、自分は、ただ…」

雇われてここに来てるだけだってか?

なら、その雇い主とやらに泣きつくんだな。

とてもではないが、この店に近づくことは出来ない、と。

「…聞こえないなら、もう一回言ってやろうか?」

俺は優しくて、暴力の嫌いな平和主義者だからな。

鎌を突き付けて、今すぐ刈るぞ、なんて野蛮なことは言わない。

だから、代わりに。

拳銃を喉元に突き付けることにした。

ガチャ、と銃口を喉につけられ、諜報員はひっ、と声をあげた。

「ここはマフィアの縄張りだ。出すものを出す客ならよし、そうでないなら…」

「ひぃっ…」

「…消えろ」

そこが、腰抜け諜報員君の限界だった。

俺が手を離すと、彼は半泣きで、一目散に駆けていった。

…やれやれ。

ちゃんと、平和的に引き取ってもらうことが出来た。

ルルシーがこの場にいたら、間違いなく突っ込みが入っていたのだろうけど。

いないのでセーフ。

「あとは…上手くやってくださいよ、ルーチェス」

欲しい女は、自分で手に入れる。

他でもない俺の弟子なら、必ず出来るはずだ。
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