The previous night of the world revolution5~R.D.~
「好きなんだったら、結婚しても良いのでは?」

「…でも…」

セカイさんは、必死に言い訳を探すように、目を泳がせていた。

…ふむ。

レスリーが言ってたな。風俗嬢はこうやって、客を惑わし、泳がせ、金を貢がせるのだと。

僕達客にとって、風俗嬢はただ一人の存在だが。

風俗嬢にとって、僕達は大勢の客のうちの一人でしかない。

セカイさんにとっても、僕はそういう存在だったのか?

違うだろう。

「何か、問題が?」

「…」

セカイさんは、きゅっと唇を結び。

そして。

「あ…あははは」

乾いた、笑い声を出した。

「ルーチェス君ってば、可愛い。駄目だよ?私みたいな女の言うこと、本気にしたら」

「…」

「まさか本気にしてるなんて。冗談だよ、冗談。結婚なんてする訳ないって」

「…」

「ルーチェス君、優しい良い子だから、他にも良い女の子がたくさんいるよ。私よりずっと。ごめんね、騙してたつもりはなかったんだよ…」

「…セカイさん」

「本当に…ね、ごめん。結婚とか…私には…考えられないから…。君のことが嫌いな訳じゃないんだけど…」

「…」

「…あの、そう。指輪…指輪は、返すから…」

…指輪なんて、要らない。

返してもらう必要はない。

「…ルーチェス君。ごめん」

「…何で」

「え?」

「何で、嘘をつくんですか?」

そんな泣きそうな顔をして。

そんな辛そうな顔をして。

何で、すぐにバレるような嘘をつく。

「…!」

「僕に嘘は通用しませんよ…。残念ながら」

その程度の嘘、簡単に見抜けるくらいには…人生経験豊富だからな。

「何で嘘を言うんですか」

「う…嘘じゃない。本当だよ。私は、ずっと…冗談のつもりで…」

「それこそ冗談でしょう。僕に嘘は通用しませんよ」

「…」

ほら、黙ってしまう。

図星を突かれたから。

難儀な相手だと思うよ、我ながら。

嘘が通用しないなんて。

でも残念だ。君は、そういう相手に惚れられたのだから。

「僕のこと、嫌いですか」

「…ううん」

「じゃあ、僕のこと好きですか」

「…うん。好きだよ」

それは真実なんだね。

「だったら、どうして…」

「…駄目なんだよ」

セカイさんの瞳に、涙の粒が零れた。

え、嘘。

「駄目なんだよ…。私、君と一緒にはいられないの…」

「え、ちょ…。なん、何で泣…」

女を泣かせるとか、何なんだ僕は。

「帰って。もう私のことは忘れて。二度とここには来ないで…」

「セカイさん…」

「お願いだよ…。もう、二度と私には会わないで…」

「でも、それは」

「帰って!」

「…」

…彼女が声を荒らげるところを、初めて見た。

そんな風に言われては、従わない訳にはいかない。

「…分かりました」

僕は、涙を流すセカイさんを置き去りにして、部屋を出た。

そうするより他になかった。
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