The previous night of the world revolution5~R.D.~
「…何で、無理なんですか」

「…」

「教えてください」

何が、僕とセカイさんの間に立ち塞がっているのか。

何が、僕達を隔てているのか。

そんな障壁は、僕が全部斬り倒してやる。

セカイさんは、涙を拭いて、観念したように語り始めた。

「…前に、私…お母さんが死んだ、って話したよね」

「えぇ」

「…ただ死んだだけじゃないの。お母さんには、借金があったの…」

…借金…。

「物凄い額だよ。多分、普通の人なら一生かかっても返せないくらい…」

「…」

「それも、まともなところからは借りてない。怖い人達から借りてるから…。返さない訳にはいかないの」

…怖い人達っていうのは。

もしかして、僕の同業者?

もしかしなくても、そうだろう。

「お母さんは、私を保証人にして借金をしてたの。だから、お母さんの莫大な借金が、私に全部のし掛かってきて…。その為に、脅されて、水商売をさせられて…」

「…」

「それでも、利息を返すのが精一杯。まともな利率じゃないから…。返済期限もとっくに過ぎてる。向こうの言いなりになるしかないの…」

「…」

「私と結婚したら、ルーチェス君も巻き込まれちゃうよ。ルーチェス君にまで、責任を負わせる訳にはいかない…」

「…」

「だから…。だから、私との結婚は諦めて。私と親しくしたら危ないんだよ。あいつらに目をつけられたら、きっと骨の髄までしゃぶられる…。ルーチェス君を巻き込みたくない」

「…それだけですか?」

「…え?」

セカイさんは、きょとんとして顔を上げた。

「結婚出来ない理由っていうのは、借金の問題だけですか?」

「だ、だけって…」

他にも、もっとこう…。

実はルティス国籍がなくて、とか。

隠し子がいるから、とか。

そういう事情はないのか。あっても何とかするが。

「お金の問題だけですか?」

「そ、そうだけど…」

「なら、話は早いです」

それくらい、簡単に解決出来る。

何の障害にもならない。

「…!?無理だよ、ルーチェス君。物凄い額なんだよ」

「そうですか」

それって、ルティス帝国の一年分の国家予算とどっちが高いのかな。

「それに…。まともな奴らじゃないんだから。仮にお金を返したとしても、必ず難癖をつけて、また搾り取ろうとするよ。何人もそんな人を知ってる。お金を持ってるって分かったら、どんな風に脅されるか…!」

「そうですか」

「そ、そうですかって…。ルーチェス君。本当に怖い人達なんだよ。会ったことある?ないでしょ?」

「ないですけど…」

でも、ルティス帝国最大のマフィア、『青薔薇連合会』の幹部には会ってきたぞ。

それどころか、その幹部に喧嘩売ったこともある。

「何をされるか、ルーチェス君には分かってないんだよ。きっと酷いことをされる。一生粘着されて、人生をめちゃくちゃにされる…!」

「そうですか」

そういう仕事だからね。マフィアってのは。

「だから、駄目なの!ルーチェス君は巻き込めない。私はどうなっても良い。一生、死ぬまで働かされるんだって覚悟してる。でもルーチェス君は…!」

「何て言う組織なんですか?」

「…え?」

「借金取りのマフィアは、何て言う組織なんですか?」

「え…っと、『アンタレス』っていうマフィアで…。『青薔薇連合会』って知ってる?そこの下部組織だって…」

はぁ、『アンタレス』。

聞いたことがあるようなないような。

僕が覚えてないってことは、多分、そんなに大きな組織ではない。

まぁ、組織の規模など、この際どうでも良い。

やることは同じだ。

「ルーチェス君…何、するつもりなの?」

「…僕のやることは変わりません」

師匠に教わったからな。
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