The previous night of the world revolution5~R.D.~
「素敵な姿ですね、ルーチェス」

「…ルレイア師匠」

ルーチェスは、たった今喉を貫いて殺した『アンタレス』の構成員を、ポイッ、と床に捨てた。

その返り血が、ルーチェスの頬に飛び散った。

ルーチェスご自慢の両剣が、ポタポタと血を滴らせていた。

まさに、死神の弟子に相応しい。

そして。

ルーチェスは、その両剣を俺に向けた。

「あなたの、教えに従います」

「…」

「僕は自分の愛する人の為に、世界の全てを敵に回す…。あなたでさえも」

…成程。

そういうことだったか。

「…素晴らしい心意気です」

それでこそ、俺の弟子に相応しい。

「その覚悟に応え、全力で相手をしてあげましょう…」

涙なくしては語れない、壮絶な師弟対決。

是非とも彼の覚悟に応えてあげたい。

…ところだったんだが。

「…!『青薔薇連合会』だ!救援に来てくれたんだ!」

「よ、良かった。助かっ…」

ルーチェスの後ろから、絶望的な迎撃に当たろうとしていた『アンタレス』の構成員達が、俺達の姿を見つけてそう叫んだ。

が。

「…残念でしたね」

俺は、『アンタレス』の構成員に向かって、ナイフを投擲した。

ナイフは吸い込まれるように、敵の喉を貫いた。

「…!?」

驚いたのは、敵だけではない。

ルーチェスもだ。

そりゃそうだろう。てっきり、師弟対決を繰り広げることになると思っていたんだろうから。

いや、俺もそうしてあげたかったんだけど。

今回は…敵が共通しててね。

「何故…僕を斬らないんですか」

「俺達も、目的は同じなんですよ」

ルーチェスが、何故『アンタレス』を襲撃しているのかは知らないが。

俺達も、目的は同じだ。

「俺達も『アンタレス』を刈りに来ました。こいつらは、『青薔薇連合会』の裏切り者なんでね」

まぁ、殺す前に、先に金を返してもらおうと思っていたんだが。

この際、それは後回しで良いや。

こいつらを始末した後で、回収させてもらおう。

「協力、感謝しますよルーチェス。俺達も加勢します」

「…ルレイア師匠…」

「…仲間だってことですよ。俺達と、あなたは」

大体、俺には、ルーチェスに向ける刃なんて持ってない。

可愛い弟分だからな。

「ほら、新手が来ましたよ」

こうなったら、俺達をまとめて始末してしまおうと。

虎の子の敵部隊が、わらわらと集まってきた。

良いねぇ。総力戦ってところか。

こんなに構成員を隠していたとは。全く悪い子達だ。

お仕置きが必要だよな?

「…さぁ、死神のお通りです」

ルーチェスにだけ、手柄を取らせる訳にはいかない。

刮目せよ。

これが、元祖主人公の力だ。
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