The previous night of the world revolution5~R.D.~
俺の、劇的な活躍によって。

『アンタレス』はあっという間に追い詰められた。

そして。

「あとは…頭領の首を取るだけなんですが…」

雑魚は全て倒した。

あとは、頭だけ。

しかし。

「何処に隠れているんだか…」

頭領の部屋らしき、最上階の部屋は、空っぽだった。

全くの無人。

いくら雑魚を殺そうが、頭目を潰さなくては、報復にはならない。

それに。

「…『アンタレス』は、一人残らず殲滅させてもらいます」

ルーチェスも、やる気満々。

俺もそのつもりだ。

「かくれんぼが好きなんですかねぇ」

「いや…。既に脱出した可能性もあるんじゃないか?」

と、ルルシー。

「いえ、それは多分ありません」

この建物に、地下脱出口なんてないはずだし。

何より、ルーチェスの突然の襲撃だ。

逃げる暇があったとは思えない。

それよりは、多分…。

「…ふーむ…」

「…仕方ない。しらみ潰しに探し…」

「…うん。こっちです」

「…は?」

俺は、その部屋の左右に並んだ本棚のうち。

右手側の奥から二番目の本棚を、鎌で切り裂いた。

スパーン、と真っ二つになって崩れ落ちる本棚。

「…何やってんの?」

「ここです、ここ」

「何が?」

「さしづめ、襲撃用シェルターってところですかね?ここに隠れてますよ」

「…本当に?根拠は?」

「死神の鎌の勘です」

「…ルリシヤかよ、お前は…」

失礼な。

元祖は俺だもん。

「本当に、こんなところに…?ただの白い壁に見えるけど…」

と、シュノさん。

うん。そう見えるね。

俺もそう見えてる。

でも、俺の鎌が言ってるんだよ。

ここに、獲物が隠れてるってね。

「じゃあ、とりあえず『ノック』してみましょうか」

「あ?あぁ…。…え?」

「さぁ、ルーチェス。出番ですよ。ルレイア式『ノック』のやり方を伝授しましょう」

「分かりました」

やはり、伝統的な良い慣習というのは、次代に伝えるべきだよな。

「良いですか?思いっきりですよ。思いっきりぶちかまして」

「はい。じゃあ、やりますね」

「お、おい待てお前ら。余計なことまで伝授せんで良い!」

ルルシーが咎めたが、時既に遅し。

ルーチェスは、くるくると両剣を回し、思いっきり、渾身の力を込めて。

両剣のゴツい刃が、白い壁を粉砕した。

その向こうには。

「あぁ…。あなたが頭領ですか」

「…!」

案の定、壁の向こうには、ぽっかりと防空ごうのような空間があった。
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