The previous night of the world revolution5~R.D.~
「…ところで」

「はい?」

居場所を与えてもらって、大変安心したのは良いのだが。

気になることが一つ。

「さっき、もう一つプレゼントがある…って言ってましたけど」

もう一つのプレゼントとは、如何に。

「あぁ、名前ですよ。あなた、ベルガモット王家の名前は名乗れなくなったでしょう?」

「はい」

だから今は、ただのルーチェスだ。

ジュリアナ、の部分も貴族特有のノーブルネームなので、今や一般人の僕が名乗ることは出来ない。

「それに、『青薔薇連合会』に入った者は、アシュトーリアさんから直々に新しい名前を与える習わしがあるんです」

あぁ…そういえば、聞いたことがある。

「その命名権を、今回は俺が頂きました。師匠なんだから、あなたがつけてあげて、って」

「成程…。それで、僕の名前は何になるんでしょう?」

出来れば、格好良いのが良いな。

「ルーチェスの部分は気に入ってるので、名字だけなんですが」

「はい。何と名乗れば良いでしょう」

「アンブローシア。ルーチェス・アンブローシアです」

アンブローシア…。

僕の名前は、今日から、ルーチェス・アンブローシア。

…成程。

ベルガモット、よりずっと格好良い。

「むむっ、やるなルレイア先輩。素晴らしいネーミングセンスだ」

「さすがルレイア。格好良い…!」

「ふふふ。でしょう?」

どや顔のルレイア師匠。

僕もどや顔したい気分だ。

だって、信じられるか?

ベルガモットなどという呪われた名前から、ようやく解放されただけではなく。

アンブローシアという、新しくて格好良い名前を、自分の名字として名乗れるのだ。

こんなに嬉しいことはない。

「これで、幹部は七人だな!多いな!」

「ラッキーセブンか?」

え、嘘。

僕、幹部なの?

それはさすがに…と思ったら。

「それが、ルーチェスは幹部になれないんです」

と、ルレイア師匠。

やはり、そうか。

「でぇぇ!?何で!?ルー公超強いのに!?おかしいじゃん!ルー公が幹部になれなかったら、アリューシャなんかクビじゃん!」

いや、アリューシャさんには遠距離狙撃という、誰にも真似出来ない強みがあるから。

「どうしてなの?ルレイア。ルーチェスは、私より強いくらいじゃない。それなのに幹部になれないって…」

「実力を疑ってるんじゃありません。実力だけなら、勿論充分幹部になれます。でもルーチェスの場合…所謂政治的配慮が必要なんです」

「…ソーセージ的はいりょ?」

「アリューシャ、政治的配慮、ね」

上手く漢字に変換出来なかったらしい。

政治的配慮…か。

まぁ、そうなるとは思っていた。

「ルーチェスはベルガモット王家の血を引く、皇太子なんです」

「でも、それは元だろ?今は違うじゃん!」

「えぇ、今は違います。今は『青薔薇連合会』の仲間です。でも、元皇太子がマフィアに、それも王室や帝国騎士団にとって公然の敵である『青薔薇連合会』の幹部になったと知られたら、必ず、悪どいことに利用しようとする輩が現れます」

…僕も、そう思う。

そういう立場なんだ。ベルガモット王家の血を引く者というのは。

多分、何処に行っても、この烙印からは逃げられない。
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