The previous night of the world revolution5~R.D.~
既に王室を出て、ベルガモットの名前も捨てたけれど。

僕には紛れもなく、あの王家の血が流れている。

「ベルガモット王家の皇太子が、今は『青薔薇連合会』の幹部をしている」なんて知られたら。

余計な勘繰りを入れられることもあるだろうし。

それどころか、ルレイア師匠の言う通り、良からぬ者達に利用されかねない。

その点では、元上流貴族で、しかも帝国騎士団四番隊隊長だったルレイア師匠も、同じことが言われるのだが。

ルレイア師匠が『青薔薇連合会』に入り、幹部になったのは、帝国騎士団を追い出されてから二年以上たってからだった。

ほとぼりが冷め、落ち着いてからのことだった。

しかし。

王室を出てすぐ幹部になったのでは、元々何らかの繋がりがあったのではないか、と疑われてもおかしくない。

まぁ、元々繋がりはあったのだが。それは僕個人との繋がりであって。

王室と『青薔薇連合会』という、組織同士の繋がりではない。

その疑いを避ける為にも、僕が幹部になるというのは難しい。

それがルレイア師匠の言うところの、政治的配慮なのだ。

世知辛い話だが。

「何年かたって、少し落ち着いてからなら、幹部昇格も有り得ますけど…。少なくとも今すぐは無理ですね」

「えぇ~…。なんか不公平じゃね?」

「なら、せめて準幹部とか…」

アリューシャさんとシュノさんが、そう言ってくれたが。

「んー…。準幹部もギリギリアウトですね」

「じゃあ平構成員かよ!ルレ公とタイマン張れる奴が!?」

「それはいくらなんでも…。不公平じゃないの?マフィアは実力主義でしょ?即幹部になれる実力があるのに、準幹部にもなれないなんて…」

仕方がない。それだけ面倒臭い出自なのだから。

念願の『青薔薇連合会』に入れてもらえたのだから、そのくらいの覚悟は…。

と、思っていると。

「勿論、考えてありますよ。アシュトーリアさんと相談して、ルーチェスには別の役職についてもらうことにしました」

…別の役職?

「ようは、『青薔薇連合会』幹部、という名称をつけるのが問題なのであって、名称だけ変えて、待遇は幹部ってことにすれば良いんです」

「名称を変えるって…。どんな名称になるの?」

「特務諜報員。別名『裏幹部』です」

「おぉぉ!なんかかっけぇ!」

…特務諜報員…。別名『裏幹部』。

成程、悪いことしてそうな役職名だ。

「アリューシャもそっちになる!幹部やめて、アリューシャも、とくむちょほーいんやる!」

「うーん、アリューシャは無理だねぇ。でもアリューシャには、『青薔薇連合会』の凄腕スナイパーっていう称号があるから」

「そういやそうだった!じゃあちょほーいんは良いや」

諦めてくれた。良かった。

折角の格好良い役職なので、誰にも譲りたくない。

「そんな訳で、今日からあなたは、『青薔薇連合会』の特務諜報員、別名『裏幹部』のルーチェス・アンブローシアさんです。宜しくお願いしますね」

「こちらこそ」

ルティス帝国王室の第三子、よりずっと素敵じゃないか。
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