The previous night of the world revolution5~R.D.~
「あら、どちら様…」
「私、昨日お隣に引っ越してした者です」
…お隣に。
そういえば今朝、無人なはずの横の部屋が騒がしかった…ような。
なんか焦げ臭い匂いもしたのだが、あれはもしかして、この人の仕業?
「えっと…。アンブローシアって言います。私がセカイ・アンブローシア。夫がルーチェス・アンブローシア」
「あら、ご夫婦なんですね。新婚さんですか?」
「えへへ…。そうです」
まぁ、なんて初々しい。
私にも、こんな時期があったんでしょうか。
「うちも、夫婦の二人暮らしなんですよ」
「そうなんですね。じゃあ、夫婦としても先輩ですね」
先輩。
なんて初々しい響き。
「これから、宜しくお願いしますね」
「えぇ、こちらこそ。夫婦で何かお困りのことがあったら、何でも相談してください」
「わぁ、頼もしいです」
歳も近そうだし、仲良く出来そうである。
何より、私は先輩ですから。
後輩にアドバイスしてあげなくては。
「これ、つまらないものなんですけど…」
セカイさんと名乗った奥様が、粗品を差し出した。
出来た奥様だ。
「まぁ、ありがとうございます」
何かお返し出来るものがないか、とふと考え。
私は、とあるものを思い出した。
「ちょっと、待っていてもらえますか?」
「?はい」
私は慌ててキッチンに戻り、料理にこっそり混ぜ込もうとしていた『邪魔者を追い払う秘薬』の小瓶を手にした。
うちで使おうと思っていたが、私はまた調合すれば良いだけだし。
「これ、結婚祝い代わりに差し上げます」
「…?これは?」
「『邪魔者を追い払う秘薬』です。これを夫にこっそり飲ませれば、夫に近寄ろうとする男や女を一掃することが出来ます」
「…!凄い!本当にそんなこと出来るんですか?」
「えぇ、出来ます。新婚のときというのは、まだ独身気分が抜けず、よそにふらふらと流されかねませんから。今のうちに、しっかり手綱をつけておくことをおすすめします」
「あはは。手綱かぁ…。分かりました。しっかり手綱つけておきます」
「そうすると良いでしょう」
先輩からの、経験に基づいたアドバイスである。
説得力は抜群。
「暇なとき、またお喋りに来ても良いですか?」
「えぇ、勿論です。歓迎します」
ご近所で仲の良いお友達なんて、今までいなかったから。
セカイさんがお友達になってくれるのなら、嬉しい。