The previous night of the world revolution5~R.D.~

「あら、どちら様…」

「私、昨日お隣に引っ越してした者です」

…お隣に。

そういえば今朝、無人なはずの横の部屋が騒がしかった…ような。

なんか焦げ臭い匂いもしたのだが、あれはもしかして、この人の仕業?

「えっと…。アンブローシアって言います。私がセカイ・アンブローシア。夫がルーチェス・アンブローシア」

「あら、ご夫婦なんですね。新婚さんですか?」

「えへへ…。そうです」

まぁ、なんて初々しい。

私にも、こんな時期があったんでしょうか。

「うちも、夫婦の二人暮らしなんですよ」

「そうなんですね。じゃあ、夫婦としても先輩ですね」

先輩。

なんて初々しい響き。

「これから、宜しくお願いしますね」

「えぇ、こちらこそ。夫婦で何かお困りのことがあったら、何でも相談してください」

「わぁ、頼もしいです」

歳も近そうだし、仲良く出来そうである。

何より、私は先輩ですから。

後輩にアドバイスしてあげなくては。

「これ、つまらないものなんですけど…」

セカイさんと名乗った奥様が、粗品を差し出した。

出来た奥様だ。

「まぁ、ありがとうございます」

何かお返し出来るものがないか、とふと考え。

私は、とあるものを思い出した。

「ちょっと、待っていてもらえますか?」

「?はい」

私は慌ててキッチンに戻り、料理にこっそり混ぜ込もうとしていた『邪魔者を追い払う秘薬』の小瓶を手にした。

うちで使おうと思っていたが、私はまた調合すれば良いだけだし。

「これ、結婚祝い代わりに差し上げます」

「…?これは?」

「『邪魔者を追い払う秘薬』です。これを夫にこっそり飲ませれば、夫に近寄ろうとする男や女を一掃することが出来ます」

「…!凄い!本当にそんなこと出来るんですか?」

「えぇ、出来ます。新婚のときというのは、まだ独身気分が抜けず、よそにふらふらと流されかねませんから。今のうちに、しっかり手綱をつけておくことをおすすめします」

「あはは。手綱かぁ…。分かりました。しっかり手綱つけておきます」

「そうすると良いでしょう」

先輩からの、経験に基づいたアドバイスである。

説得力は抜群。

「暇なとき、またお喋りに来ても良いですか?」

「えぇ、勿論です。歓迎します」

ご近所で仲の良いお友達なんて、今までいなかったから。

セカイさんがお友達になってくれるのなら、嬉しい。
< 481 / 627 >

この作品をシェア

pagetop