The previous night of the world revolution5~R.D.~
…ここに連れてこられてから、どれだけ時間がたっただろう。

既に、私はボロボロの状態だった。

手足は千切れるほど強く縛られ、更に筋弛緩剤を注射され、ほぼ身動きが取れない。

床に転がされ、サンドバッグのように殴られたり、ボールのように蹴られたり。

意識が飛べば氷水を頭からぶちまけられて、無理矢理目を覚まされた。

果ては両手足の爪を全て剥がされ、ナイフで皮膚を削がれた。

マフィアの「尋問」など、そんなものだ。そう珍しくはない。

激しい殴打に耐えながら、私が考えていたのは、この正体の知れない「尋問官」達のことでも、自分の命のことでもない。

仲間達のことだった。

とりわけ、アリューシャのことを。

アリューシャのおやつの時間までに帰れなかった。

心配してるだろうな。

おやつはちゃんと食べただろうか?

今頃何をしてるんだろう?私が傍についてなくて大丈夫だろうか。

ルレイアは、私のメッセージに気づいただろうか。

気づいた上で、私を助けに来るだろうか?

分からない。敵の素性も、人数も未知数なのだ。

危険を避ける為に、慎重になっているかもしれない。

それに、私の居場所が分かるだろうか。

私の携帯には、ルリシヤが小型探知機を取り付けてくれている。

でもその携帯は既に壊され、「尋問官」達に押収されている。

もし携帯の中に潜ませた探知機に気づかれ、壊されていたら。

私を探すには、相応の時間がかかるだろう。

…無理に助けに来る必要はない。

仲間達に危険が及ぶくらいなら、私の命など見捨てても構わない。

私がいるのは、そういう世界だ。

私がいなくても、『青薔薇連合会』は安泰だ。

普段は猪突猛進で、後先考えずに行動しているように見えるルレイアだが。

実はあれで思慮深い面もあるし、何より彼は帝国騎士官学校で専門の教育を受けた、用兵の専門家だ。

帝国騎士団にいた経験もあることから、表社会の事情も、裏社会の事情も、どちらも熟知している。

それに、今はルリシヤもいる。

言わずもがな、ルリシヤはルレイアに匹敵するほどの実力の持ち主だ。

基本的には、あの二人に任せておけば問題ない。

ルレイアには、ルルシーもついている。

もしルレイアが暴走したとしても、ルルシーが止めてくれるはず。

それに、シュノもいる。

シュノは『青薔薇連合会』きっての女傑。

ルレイアを慕っている彼女なら、進んでルレイアをサポートしてくれるだろう。

もし私に何かあっても、彼らがいれば大丈夫。

…あぁ、でもアリューシャは。

アリューシャにとって、私の代わりになる存在はいるだろうか。

それだけが心配だった。
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