The previous night of the world revolution5~R.D.~
アップルパイ、初めて作ってみたんだけど。

「はふはふ。美味しい~!焼き立て最高!」

確かに美味しい。

アップルパイが美味しいって言うか、それを美味しそうに食べてるセカイさんを見てる方が美味しい。

良い眺めだ。

「普段の料理も上手な上に、お菓子作りも得意なんだね、ルーチェス君は」

「得意…なんでしょうか?お菓子作ったのは初めてなんですけど」

「初めてでこれかぁ~。凄いなぁ。ルーチェス君、君、万が一マフィアをクビになっても、お菓子屋さんを開けるね」

良い考えだ。

僕、マフィアクビになったら、お菓子屋さんになろう。

王族からマフィアになって、その後お菓子屋さんって。

なんて目まぐるしい人生だ。

その横に、セカイさんがいてくれるのなら何でも良い。

「…それにしても、ルーチェス君」

「はい?」

「このアップルパイ、物凄く美味しいけどさ」

「はい」

それはありがとうございます。

美味しく食べてもらえて、りんごも喜んでることだろう。

しかし。

「…残り、どうするの?」

「…どうしましょう」

うちのオーブンって、結構大きいからさ。

セカイさんに喜んで欲しくて、10号の型で作ってしまった。

直径30センチのアップルパイ。

二人では、とても食べきれない大きさである。

「済みません。ケーキの大きさがセカイさんの喜びの大きさだと勘違いして」

「嬉しいけど、大き過ぎだよ!食べきれないよ!」

我が家はしばらく、アップルパイ生活しなきゃならなくなるな。

確かに美味しいのは美味しいが、これだけ食べたら、飽き飽きしそう。

「どう…。…あ」

「あ?」

「そうだ。半分に切って、明日、お隣さんに持っていっても良い?」

と、セカイさん。

成程。その手があったか。

これぞ助け合いの精神。ご近所付き合いの一環。

「良いですね。食べかけで申し訳ないですけど」

「こんなに美味しいんだから、きっと喜んでくれるよ。明日、私が持っていくね」

「えぇ。お願いします」

あ、でもクランチェスカ夫妻が、甘党じゃなかったらどうしよう。

そのときはまぁ…仕方がない。

折角作ったのだから、美味しく頂いてくれることを祈ろう。
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