The previous night of the world revolution5~R.D.~
セカイさんが持ってきてくれたアップルパイを温め直し。

大きくカットして、来客用の上等な紅茶を淹れる。

「どうぞ。お口に合えば良いですけど」

「わぁ、良い匂い」

ティーカップに紅茶を注ぎ、セカイさんの前に出す。

私は彼女の正面に座った。

「それじゃ、アップルパイ頂きますね」

「えぇ、どうぞ」

さっくりと焼けた美味しそうなアップルパイを、フォークで切って口に入れる。

瞬間、信じられないほど芳ばしく、優しい甘さが口の中一杯に広がった。

「ね、ね、美味しいでしょう?」

食い気味に聞いてくるセカイさん。

「はい。凄く美味しい…」

今まで食べたアップルパイの中で、一番美味しいかもしれない。

それくらい美味しい。

「一体何処で買ったんですか?」

私も、もう帝都に住んで何年にもなるし。

ルヴィアさんが、よく美味しいケーキ屋さんでケーキを買ってきてくれるけど。

こんなに美味しいアップルパイを売っている店は、聞いたことがない。

するとセカイさんは、よくぞ聞いてくれた、みたいな顔で。

「ふふ。それ、買ってきたんじゃないんです。手作りなんですよ」

「え、手作り?」

「はい!うちのルーチェス君…じゃなくて、うちの旦那さんが作ってくれました」

…なんてこと。

セカイさんの夫が。こんな美味しいアップルパイを。

「随分と、お菓子作りが得意なんですね…」

「それが、初めてだって言うんですよ」

え?初めてでこのクオリティ?

「お菓子作りだけじゃなくて、料理も得意なんです。うちでは、料理は基本、夫が作ってくれるんですよ」

「まぁ…」

「それがもう、とっても美味しくて!休日なんて、特に手の込んだものを作ってくれるんです。この間なんて、牛テールのワイン煮込みを作ってくれて。もう、ホテルに食事に来たのかと思うくらい美味しくて」

余程、料理上手な旦那が自慢らしく。

セカイさんは、嬉しそうにそう語った。

…あの旦那さんに、こんな特技があったとは。

ルヴィアさんより年下なのに。

「まぁ、私が料理苦手なのが原因なんだけど…。元々グルメな人だから、キッシュとかアヒージョとかアクアパッツァとか、お洒落な料理を一杯知ってて。それを作ってくれるんです」

「…」

「特に、旦那さんが作ってくれるオムライスが、一番の大好物なんです。本当に上手なんですよ」

…なんて。

…なんて、羨ましい。

私は、あまりの羨ましさに、溜め息が出そうになった。
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