The previous night of the world revolution5~R.D.~
すると。

地下室に、新たな人物が入ってきた。

その姿を見るなり、尋問官達は慌てて頭を下げた。

恐らく、彼らの上司なのだろう。

私は軋む身体を動かして、顔を上げた。

上司の顔を見たら、彼らの組織が分かるかと思ったのだ。

しかし。

彼らの上司は、ゴツゴツとしたガスマスクをつけていた。

…やはり、分からないか。

尋問官達からして、サングラスに黒いマスクをつけ、顔を隠しているのだから。

ただ、私をここに連れてくる手管と言い、この「尋問」のやり方と言い、かなり手慣れた連中であることは推測出来る。

単なる不良グループ、って訳ではなさそうだ。

間違いなく俺達の同業者。それも、かなり規模の大きな…。

「どうだ、何か吐いたか?」

ガスマスクの男が、部下達に尋ねた。

「いえ、何も…。貝のような奴です。これだけやっても、何一つ…」

…当たり前だ。

爪を剥がされようが、腕をへし折られようが、一言たりとも漏らすものか。

拷問に耐える訓練は受けているし、こんな奴らにくれてやる情報など何もない。

精々、骨折り損で地団駄踏んでいれば良い。

まぁ、それで拷問の痛みが軽減される訳ではないのだが。

「…ふん、口の固さだけは、さすがにマフィアの幹部か」

ガスマスクの男が、乱暴に私の腹部を蹴りつけた。

受け身を取ろうとしたが、筋弛緩剤のせいで、身体が思うように動いてくれなかった。

更に。

動けない私の右手を、ガスマスクの男が思いっきり踏みつけた。

グキッ、と嫌な音が響いた。

息が止まるような痛みに、私は奥歯を強く噛み締めた。

何とか、呻き声を漏らさずに済んだ。

「その頑張りが、いつまで続くかな」

嘲るようにそう言って。

「『青薔薇連合会』の次期首領が、情けない姿だ。お前がこの有り様なら、お前の仲間達も、無能の集まりなのだろう。名前だけが肥大した、帝国騎士団の腰巾着」

「…」

「貴様らの時代は、もう終わった。大人しく、表舞台から退くが良い」

「…ふふ」

私は、笑った。

「…何がおかしい?」

おかしいさ。おかしいに決まってる。

私達の時代が終わった?

私の仲間が無能?

あぁおかしい。

こいつらは、何も分かっていない。

『青薔薇連合会』には彼らがいる。

アシュトーリアさんがいる。

ルレイアがいる。

ルルシーがいる。

シュノがいる。

アリューシャがいる。

ルリシヤがいる。

彼らがいる限り、『青薔薇連合会』の時代が終わりなんて、そんなことは有り得ない。

私を捕らえて、それで笑ってるような連中じゃあ、彼らには歯が立たないぞ。

「…笑わせるな」

私は、不敵に笑ってみせた。

「お前達ごときが…一億年かかったって、私の仲間に敵うものか」

「…!」

私の挑発に、ガスマスクの男は怒りを露にした。

力任せに私を蹴りつけ、踏みつけた。

大丈夫、この痛み、この血は、無駄にはならない。

私の命が『青薔薇連合会』の為に消費されるのなら、私はそれで…。

…そのときだった。

上の方から、凄まじい轟音が響いてきた。

地震が起きたかのような振動と衝撃だった。

「な、何だ!?」

一度だけではない。

続けて二度、三度と轟音が響き渡った。

この音は…。

「…もしかして…」

私の頭に、仲間達の顔が思い浮かんだ。
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