The previous night of the world revolution5~R.D.~
…二時間後。

ようやく、ダイニングに平穏が訪れた。

割れた皿の破片は綺麗に片付け、掃除機で細かい破片まで吸い取った。

使い物にならなくなった皿を買い足し、更に破れたテーブルクロスも新しく買ってきた。

皿もテーブルクロスも、今度は破損しにくい素材を選んだ。

調味料も入れ直して、テーブルの中央に置く。

困ったのがカーペットである。

醤油やソースやお酢、砂糖、塩なんかがカーペットに染み付いて、何とも言えない異臭を放っている。

しかも、砂糖や塩はともかく、醤油とソースは、カーペットに大きなシミを作っている。

カーペットごと買い換えても良いのだが、食器棚やテーブルや、その他家具を退けて、カーペットを敷き直して…なんてやっていたら、一日仕事だ。

仕方がないので、僕は以前読んだ『猿でも分かる!』シリーズのお掃除知識を活用し。

中性洗剤を使って染み抜きを行い、なんとか目立たなくなるまでシミを消すことに成功した。

臭いは…まぁ、しばらくすれば取れるだろう。

とりあえず、これで一段落。

「さすがルーチェス君…!」

「えぇ…。掃除術を学んでおいて良かったです」

どんなことでも、知識は無駄にならないもんだな。

「…さて。息つく間もなく、そろそろ夕食を作らなくては…」

「ルーチェス君!こんなときくらい、私が…」

「じゃあ、そこで応援しててください」

「も~!」

もーって言われても。

更に仕事が増えたら嫌だし。

今度はキッチンが炎上しました、なんてことになったら、さすがの僕も目眩がする。

セカイさんが無傷なら良いけどさ。

「あうぅ…。ごめんね、ルーチェス君…。私、お姉ちゃんなのに…」

「良いですよ。僕、お姉ちゃんを支えるしっかり者の弟なので」

「…ルーチェス君!君はなんて可愛いんだ!」

がばっ、と抱きつかれた。

可愛いか?今の。

「あ~。ういのう、ういのう~」

「はぁ…。ありがとうございます」

まぁ、本当にこんなお姉ちゃんだったら、僕も好きになれたんだろうけどな。

リアル姉はあんなだから、セカイお姉ちゃんで妥協する他あるまい。

「今日のご飯は何かな~?」

「今日はイタリアン統一です。カプレーゼにバーニャカウダ、メインはチキンのディアーヴォラです」

「何それ~!美味しそ~!」

「大好きなセカイお姉ちゃんの為に、レシピを調べておきました」

「何それ~!可愛い~!」

更に、ぎゅ~っと抱きついてくるセカイさん。

料理の腕も壊滅的だし、掃除をやらせたら、掃除するところを増やす始末だが。

こんなセカイさんが大好きで堪らないのだから、惚れた弱味と言うのは厄介である。
< 502 / 627 >

この作品をシェア

pagetop