The previous night of the world revolution5~R.D.~
「こんにちは。セカイさん」

「あっ、フューニャちゃんだ!いらっしゃい!」

セカイさんは、笑顔で迎えてくれた。

先日の女子会ですっかり打ち解けた私達は、セカイさんの方が少し年上だと発覚し。

それ以来、セカイさんは私に敬語をやめ、フューニャちゃんと呼んでくれるようになった。

何だか新鮮である。

私もタメ口で良いと言われたのだが、それはまだ気恥ずかしいので、相変わらず敬語だ。

「どうしたの?」

「これ、杏の蜂蜜漬けです。先日のアップルパイのお礼にと思って」

「えぇ~!本当?嬉しい。ありがとう!」

セカイさんは、顔をパッと明るくさせた。

表情豊かな人である。

「ね、フューニャちゃん。今時間ある?」

「えぇ、ありますけど…」

「良かった。入って入って。丁度暇してたんだんだよ。お茶しよ」

実は、密かにそう誘ってもらえるのを期待していたので、心の中でガッツポーズ。

「お茶って言っても、ルーチェス君いないと、私上手くお茶淹れられないからな~。ペットボトルの紅茶で良い?」

「?良いですけど…」

「この間ティーバッグで練習したんだけど、ルーチェス君に『漢方薬飲んでる気分です』って言われたんだよね~。何が駄目なんだろ」

「…」

漢方薬って、確か物によっては、凄く不味いんだったよな。

葉っぱで淹れたんだけどちょっと失敗しちゃった、ならまだ分かる。

ティーバッグで失敗って、有り得るのだろうか。

あれって、簡単に言えば、お湯の中にティーバッグを入れるだけで出来るよね。

どの過程で失敗したんだろう…。

聞いてみたいけど、聞かない方が良い気がする。

「はい、どーぞ」

セカイさんは、屈託のない笑顔で、ペットボトルの紅茶をグラスに入れ、氷を加えたものを出してくれた。

…これは大丈夫ですよね?

「あと、こっちは頂き物なんだけど」

更に、洋菓子店で売っているような、お菓子の詰め合わせを出してくれた。

こっちは安全そうだ。

「相変わらず、料理は旦那さんの仕事ですか?」

「そうなの。ルーチェス君のご飯、凄く美味しいんだよ」

それは良かった。

全く、すぐキッチンを廃墟にするうちの夫に、セカイさんの夫の爪の垢を煎じて飲ませたい。

無い物ねだり、隣の芝は青い、そんなことは分かっているが。

やはり内心、はぁ、と思ってしまうのである。
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