The previous night of the world revolution5~R.D.~
…そういえば。

前回は私の家の方で女子会をしたから、アンブローシア家に入るのは初めてである。

同じマンションだし、フロアも同じだから、間取りはうちと変わらない。

でも、何だか全く別の部屋みたいだ。

「素敵なインテリアですね、この部屋」

インテリア雑誌に出てくる部屋みたいだ。

「でしょ?この部屋、家具は元々備え付けてあったんだけど、これじゃ面白くないから、ってルーチェス君が配置を変えたの。なんか、ルティス帝国北部の、伝統的な民家のインテリアを真似てるんだって」

「へぇ…」

なんてお洒落な。

ルヴィアさんだったら、絶対思い付きもしないだろう。

家具はうちと大して変わらないのに、配置を変えるだけで、ここまでお洒落に見えるなんて。

更に、チェストや本棚の空きスペースに、ちょっとした小物が置いてあるのもお洒落だ。

ただ無闇に高価なものを並べているのではない。本当に、雑貨屋さんに普通に売ってるような小物なのに。

部屋の中に元々置いてあったかのように、しっくりと馴染んでいる。

なんてセンスの良い旦那さんだろう。

「掃除とか、大変じゃないですか?」

「あぁ、それもね。ルーチェス君がやってくれるの」

セカイさんは、苦笑いしながら言った。

えっ。

「旦那さんがお掃除してくれるんですか?」

「してくれるよ。私が苦手だからなんだけど」

セカイさん、料理だけじゃなくて掃除も苦手なのか。

いや、それより。

「旦那さん、よくそんな時間がありますね。料理もして、掃除もして…」

で、昼間は『青薔薇連合会』で、なかなかの役職についているそうな。

大雑把に、掃除機だけかけているのかと思ったが。

部屋の隅やチェストの上など、細かいところまで埃一つなく、すっきりと片付いている。

こんな丁寧な掃除を、一体、いつやっているのだろう。

「私も凄いと思ってるんだよ。ルーチェス君、凄く要領が良くて…。短い時間で、何でもパパっとやっちゃうの」

「…なんて高スペックな…」

お皿洗いでさえ、もたもたあたふたしてる、うちのルヴィアさんを思い出す。

うん。あの人には、絶対無理だ。

放っておいたら、洋服もペットボトルも床に撒き散らすし。

「マルチタスクには慣れてますから、とか言って。カーペットに溢したシミも、あっという間に綺麗にしちゃうんだ」

「…」

想像する。ルヴィアさんが、うちのカーペットに醤油を溢したらどうするか。

きっと慌ててふきんを持ってきて、無闇にごしごし擦って、更に被害を拡大させる姿が見える。

絶対そうする。自信がある。

「私には勿体ない、良い人なんだよ~」

「…そうですか…」

セカイさんの旦那さん、ちらりと見たけど。

あの人、生まれながらの気品と言うか…。立ち居振る舞いからして、とても上品な人だった。

その上、料理も掃除も出来て、センスも良いなんて…。

そんなハイスペックな夫が、この世にいるとは…。
< 505 / 627 >

この作品をシェア

pagetop