The previous night of the world revolution5~R.D.~
「うぇーんルルシー!ルルシーっ!」

「…」

「ルルシールルシールルシー!る~る~し~っ!」

…うるせぇ。

寝る前に、耳もとで蚊の羽音がしたら、イラッとするだろ?

あれと同じ気分。

蚊か。お前は。

線香焚くぞ。

「うるさいな、ルレイア…。どうしたんだよ、最近喧しいぞ」

昔から喧しかったけどさ。

最近の喧しさは、例年を上回る勢いだ。

「だってルルシー…。俺、いや、俺達ヤバいですよ?ピンチですよ?」

「何が?」

「出番ですよ出番!活躍する!機会が!全然ないじゃないですか!」

あぁ…またその話か。

こいつ、最近その話ばっかだよな。

「良いじゃないか、別に…。若い者に譲ってやれよ」

「何をぅ!俺はまだまだ若いですよ!昨日だって三人を相手に、ピー連続しましたから!」

誰が性欲の話をした。

そういう意味じゃねぇよ。

「俺が格好良く活躍する機会が欲しい~」

「はいはい…。お前はいつも格好良いよ」

「本当に!?ですよね~ルルシー分かってる!この俺の魅力は、そんじょそこらの主人公達には負けませんよ!」

誰に宣言してるんだ。

まぁ、元気が出たなら良いよ。

しかし。

ルレイアは、またしてもめそめそと抱きついてきた。

「ルルシ~」

「何だよ…」

鬱陶しいが、相手してやらなかったら、もっと騒がしく喚き散らすに決まってる。

シュノとか巻き込んでな。

で、また俺が無実の罪でシュノに怒られるのだ。「ルルシー!それは酷いと思うわ!」とか言われて。

だから、ルレイアがかまちょするときは、ちゃんと構ってやらないといけないのである。

これ、経験則な。

「弟子がね~、弟子が。俺の弟子が」

「ルーチェスがどうしたんだよ?」

「師匠である俺を差し置いて、嫁とイチャイチャするんですよ!毎日!俺もルルシーとイチャイチャしたいのに~!」

今してるじゃん。

ベタベタくっついてきてるじゃん。

「…でも、奥さんにご飯作ってあげたり、掃除してあげたりしてるそうですよ。変わってますよね~」

「…」

皆、ルレイアに騙されるなよ。

今時、旦那が家事を分担するのって、当たり前だから。

男だって料理も掃除もするんだよ。

何もかも至れり尽くせりで、ハーレムの女達が跪くルレイアには、分からないかもしれないけどな。

「良いな~。俺もルルシーと仲良く同居生活したいな~」

「しねーよ」

ただでさえ振り回されまくってるのに、これ以上振り回されてたまるか。

全く…と思っていると。

「済みません、ルルシーさん…」

「ん?どうした」

部下の一人が、申し訳なさそうな顔をして部屋に入ってきた。

「ルレイアさんとの逢瀬の時間を邪魔して、本当に申し訳ないんですが…」

「…うん。別に逢瀬なんてしてないから、遠慮なく来てくれて良いぞ」

そういう余計な気遣いは要らないから。

「で、どうした?」

「それが…その…。お知恵を頂きたい…と言うか、助けて頂きたい…と言うか、何とかして欲しい…と言うか…」

…段々本音に近づいてないか?

助けるって、何を?

「何があった?」

「そのぅ…。大変言いにくいんですが…」

「何でも言ってくれ。俺が出来ることなら、何でもしてやる」

「いやん、ルルシー素敵!」

ルレイア、ちょっと黙ってような。

すると部下は、もじもじとしながら、顔を上げた。

「ルヴィアさんが…。今朝から、机に突っ伏してぴくりとも動かなくて…」

「…」

「声をかけても、あの、僭越ながら肩を揺すっても、『フューニャ…』としか言わなくて…」

「…」

「挙げ句、えっと、狂ったのか、泣きながらあははははって笑ってて…。不気味で…」

「…」

「…あの、何とかしてください」

「…」

…そうか。

切実な…相談だな。
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