The previous night of the world revolution5~R.D.~
自宅の玄関を開け、中に入った瞬間。

俺は扉を閉めるより先に、玄関先に這いつくばった。

玄関の扉開けっぱなしで、渾身の土下座を披露したのである。

「ルヴィアさん、おかえ…。…!?」

帰ってきたかと思ったら、何故か玄関で土下座している夫に、フューニャはぎょっとしていた。

当然である。

しかし、もう形振り構ってはいられない。

「な、何に目覚めたんですか?」

別に土下座に目覚めた訳ではないけども。

今、俺に出来るのはこれだけなのだ。

「フューニャさん…」

「…はい…?」

「俺に…俺に家事を教えてください!何でもします!」

「…!?」

驚いたのは、フューニャだけではなかった。

玄関開けっぱなしで、土下座する俺を、丁度帰宅したばかりのルーチェスさんが通りかかった。

「…!?」

玄関開けっぱなしで土下座するご近所さんを見て、ルーチェスさんは何と思ったのだろう。

なんか変な場面に出くわした…とばかりに、俺とフューニャを順番に見て。

「…」

無言で、去っていった。

しかし、俺はルーチェスさんに土下座を見られたことにさえ気づいていなかった。

そんなことは、今はどうでも良い。

「どうしたんですか、ルヴィアさん…。いきなり…」

そう言いながら、フューニャは玄関の扉を閉めた。

そのときになって初めて、俺は玄関開けっぱなしで土下座していたことに気づいた。

「家事を…俺に仕込んでください…」

「はい…?」

考えた。どうやったら、少しでもルーチェスさんに近づけるか。

年齢は変えられない。見た目も変えられない。

俺には生まれつきのセンスや、高貴な雰囲気もない。

でも、家事なら。

家事なら、練習すれば、何とか出来るようになるかもしれない。

フューニャに見捨てられない為には、最早これ以外にない。
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