The previous night of the world revolution5~R.D.~
最早、半泣きであった。

「俺にはルーチェスさんみたいに、全てのことを器用にこなす才能はないけど…。でも、フューニャに捨てられないように頑張るから…。掃除も料理も洗濯も、死物狂いで覚えるから…」

「…」

「だから…捨てないでください…」

「…」

渾身の土下座。

これで駄目だったら、もう手の打ちようがない。

しかし。

「…全くもう、困った人です」

フューニャは土下座する俺の頭を、なで、と撫でた。

「誰に何を吹き込まれたんだか…。いえ、私のせいですかね。お隣と比べたりなんかして…」

「そんな…!フューニャは何も悪くない。俺が…」

俺が家事能力皆無なのが悪いのだ。

それなのに。

「良いんですよ。あなたはあなたのままで」

「え…?」

がばっ、と顔を上げる。

そこには、フューニャの優しい微笑みがあった。

天使か?

「そりゃあ、ちょっとくらいは家事出来た方が有り難いですけど。でも、アンブローシアさん家みたいに、完全に夫が家事をしてしまったら、私のやることが何もなくなっちゃうじゃないですか」

「…フューニャ…」

「だから、あなたはそのままで良いんです。そんなことで嫌いになる訳ないじゃないですか。本当に…馬鹿な人です」

「ふっ…フューニャぁぁぁ…」

ボロボロと泣きながら、フューニャに抱きつく。

あったかい。あったかいよ。

「はいはい、全く…。大きな子供で、困ったものです」

よしよし、と背中を撫でてくれるフューニャ。

今まで何度も思ったけれど。

やっぱり俺、フューニャと結婚して良かった。
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