The previous night of the world revolution5~R.D.~
…愛人?

「王族って言ったら、普通側室とか、愛人とか囲ってるものじゃないの?」

「あー…。まぁうちの馬鹿両親は、二人して愛人いましたからね…」

それどころか、他でもないこの僕が、愛人との子だ。

多分。

あ、待てよ。

国王や王妃は、公然と愛人を持つことを認められてはいない。

だから、愛人がいたとしても、表向きはそれを隠さなければならないのだ。

「え?側室?そんなのいませんよ(震え声)」みたいに。

言っちゃったよ。うちの親二人に愛人がいたこと。

こんな秘密(笑)が世間にバレたら、一応元王族の身としては不味いのだが…。

…ま、いっか。

今の僕には関係ないし。

「ほら、貴族のお淑やかな令嬢と、実はイケナイ仲に…みたいな」

「貴族のお淑やかな令嬢…。まぁデートはしたことありますけど」

したことがあると言うか、無理矢理させられたんだけど。

あの人元気だろうか。

僕じゃなくて、もっと良い人と結婚してくれ。

「別に良いよ、愛人作っても。ルーチェス君なら私にバレないように上手くやるだろうし。愛人がいるってことは、それだけ夫がモテるってことだしねー」

なんて前向きな思考なんだ。

「でも僕に愛人を許したら、セカイさんも当然愛人を持つけど良いよね、ってことになりません?」

つまりそれって。

多夫多妻制をお互いに認める、ってことだよな?

そういう夫婦の形も悪くはないだろうし、それは夫婦の自由だと思う。

お互い納得して、合意の上で行っているのなら、な。

「私浮気すると思うから、あなたも良い人がいたら浮気して良いよ」。

「分かった、じゃあそういうことで」。みたいな。

大体僕は、恐らくルティス帝国最大の、一夫超多妻制の王者、ルレイア師匠の弟子なんだし。

師匠を見習うなら、僕も愛人を作るべきなのかもしれない。

愛人までは行かずとも、一夜のお遊びくらいなら。

ルレイア師匠にとっては、最早日常。

僕はルレイア師匠を尊敬しているし、憧れているし、あらゆる面で彼を見習いたいと思っているが…。

「僕は愛人は要らないですね」

「え、そう?」

「えぇ」

あの糞親には、嫌な思いさせられたんだし。

あんな風にはなりたくない。

意地でも。

それに、ルレイア師匠だって。

ハーレムにはたくさんルレイア師匠の信奉者がいるが、結局ルレイア師匠が心に決めた相手は、ルルシーさん一人だけ。

そういう意味では、あれでルレイア師匠も一途なんだぞ。

そうは見えないかもしれないけど。

「何より、僕はセカイさんに、僕だけのものであって欲しい」

「ほほう?」

「つまり、浮気されたくないので、僕も浮気しません」

小さい頃習っただろ?

自分がされて嫌なことは、人にもしちゃいけません、ってな。

「成程、ルーチェス君は良い子じゃの~。よしよし」

何故撫でる?

「でも、もし他の人としたくなったら言ってね。私もそのときは言うから」

「分かりました」

「あと、えっちなお店使いたくなったら、それも言ってね。別に止めはしないから。ただ、病気には気を付けてね。ああいうお店って、たまに怖い病気持ってる人がいるから」

そうか。セカイさんも前はそういう畑にいたんだもんな。

まぁ、ルレイア師匠の営業する店は、その辺りのことはきちんと対策してます、と自信満々に言ってたから。

そこは大丈夫だと思う。

うちの経営する風俗店で性病が出たら、洒落にならないもんなぁ。

「分かりました。じゃあセカイさんも、僕以外の刺激が欲しくなったら、事前申告してください」

「はーい。申告しまーす」

夫婦って、色んな形があると思うけど。

アンブローシア家では、お互い、嘘だけはつかないようにしよう。
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