The previous night of the world revolution5~R.D.~

sideルレイア

─────…シュノさんをパーティ会場に呼び出すという、重大任務を背負った俺は。

そうと悟られないように気を付けながら、シュノさんの執務室を訪ねた。

「しゅ~のさん。こんにちは~」

明るい声をかけて、シュノさんの部屋に入ると。

「…」

シュノさんは、自分のデスクチェアに腰掛けて、ボーッとしていた。

仕事をするでもなく、ただ虚空を見つめているだけ。

…大丈夫か。

しかも、彼女の服。

いつもは、俺がプレゼントしたゴスロリワンピースを着ているはずなのに。

今日のシュノさんは、何故か、地味なグレーのジャージを着ていた。

…だっせぇ…。

俺が入室したことも、一瞬気がつかなかったようで。

「…?どうしたの、ルレイア」

数秒ほど遅れて、シュノさんはようやく俺が訪ねてきたことに気がついた。

うーん…。これは、思ったより重症か?

しかし、ここで心配そうな表情を出す訳にはいかない。

相変わらず明るい口調で、俺は用意していた言葉を続けた。

「ちょっと来てくれませんか?」

「…何で?」

「ルーチェスが、超特大のアップルパイを焼いてきてくれたんですよ。折角だから皆で食べようって」

「…!」

ルーチェスの名前を聞いて、何故かバツの悪そうな顔をするシュノさん。

ほう。ルーチェスに何か思うところが?

ちなみに、ルーチェスがアップルパイを焼いてきてくれたのは事実である。

パーティ会場のテーブルには、ルーチェスのアップルパイがちゃんと乗っている。

嘘ではない。

「凄く美味しそうですよ。一緒に食べましょう」

いつもなら、二つ返事で「うん、行く」と腰を上げるはずのシュノさん。

しかし。

「…」

今日の彼女は、しょぼんと俯いたまま、無言であった。

「シュノさん?」

「…私は、良いわ」

挙げ句、返ってきたのはそんな言葉。

「アップルパイ…要らない」

「どうして?シュノさん、アップルパイ嫌いでしたっけ」

「…そういう訳じゃないけど…」

だよね。

シュノさんが甘いもの全般好きで、よくアシュトーリアさんと「女子会」と称して、甘いものを二人で食べていることは、幹部組なら誰もが知っている。

「じゃあ…嫌いなのは、ルーチェスですか?」

「…!」

俺がそう尋ねると、シュノさんはハッとして顔を上げた。

…図星か?

「そ、そうじゃなくて…」

「じゃあ、行きましょうよ。皆待ってますよ」

「…」

強引に急かすと、シュノさんは諦めたような顔をして、立ち上がった。

よし。

強引ではあるが、何とか連れ出すことに成功した。
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