The previous night of the world revolution5~R.D.~
『青薔薇連合会』に入った当初、ルリシヤの人望は、ないどころか、マイナスであった。

若くて、仮面で、しかも他組織からひょっこりと現れて、いきなり幹部に匹敵されたルリシヤ。

あんな得体の知れない若造に、誰が頭を下げるもんか、とまで宣う構成員もいたとか。

しかし、今やルリシヤの幹部としての地位は、確固たるものになっている。

ルリシヤが、幹部に相応しい実力の持ち主であることは、今では『青薔薇連合会』の誰もが知っている。

そして、もう一つ。

ルリシヤは、大変面倒見の良い人物である。

『セント・ニュクス』の首領をやっていたこともあって、ルリシヤは大変部下の面倒見が良い。

『青薔薇連合会』は、ルティス帝国にある非合法組織のご多分に漏れず、読み書きが出来ない、学校に通ったことのない構成員も少なくない。

そんな文盲の構成員達に、ルリシヤは積極的に読み書きを教えた。

それだけではない。

気まぐれに自分の手料理を作っては、部下達にふるまっているとか。

こんなエピソードがある。

ある日ルリシヤが、神妙な顔をして本部内を歩き回り、通りすがりの一般構成員に声をかけていった。

「悪いが、時間があるならちょっと来てくれ」と。

声をかけられた者達は、一体何事かと、正直断りたいけど幹部に誘われたら断れないから、戦々恐々としながらついていった。

こうして集められた構成員は、およそ二十名。

彼らは一つの部屋に集められ、不安げにお互いを見つめ合っていた。

ルリシヤ幹部は、たまに部屋にこもって、何やら怪しげな新兵器の開発をしているという噂。

もしかして自分達は、その実験にでも使われるんじゃないかと。

有り得ない話ではない。

怯えていた彼らの前に、ようやくルリシヤが現れた。

…ほかほかと湯気をたてる、寸胴鍋一杯のおでんを持って。

きょとーんとしている構成員達に、一言。

「たくさん作った方が美味しいと思って寸胴鍋に作ったんだが、さすがに食べきれないから皆で食べよう」

ちなみにルリシヤ特製のそのおでんは、大層美味しかったそうな。

俺も食べたかったなぁ。

料理だけではない。

最近では、通りすがりの構成員を捕まえては、新作のマジックを披露し。

驚く構成員を見て、ふふふ、とどや顔をして、華麗に去っていくとか。

そんなルリシヤ。

幹部達は、それぞれ自分達の派閥を持ち、部下を統制しているが。

最初の頃、ルリシヤは「自分は余所者だったのだから」と言って、積極的に自分の派閥を作りはしなかった。

しかし、今では。

ルリシヤの実力、そして彼のユーモア溢れる人柄から、彼の派閥に入りたいと自ら志願する者が続出する始末。

今では、すっかり『青薔薇連合会』の幹部が板についたルリシヤである。




しかし。



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