The previous night of the world revolution5~R.D.~
「…どうしたら良い?」

俺は、どうしたらルリシヤを助けてやれる?

何をすれば、ルリシヤをクレマティス家の呪縛から解放してやれる。

俺に出来ることなら、何でもする。

ルリシヤの兄を手にかけろと言われたら、躊躇いはしない。

例えルリシヤが、それを望まなくても。

「まずは、真偽を確かめないといけませんよね」

「真偽…」

…つまり、本当に今のルーチェスの仮説が真実なのかどうか、ルリシヤに問い詰める必要がある、と。

「その上で、ルリシヤがどうしたいのかを聞きましょう」

「どうしたいのかって…」

「クレマティス家に帰りたいか、帰りたくないか聞くんですよ」

「…!」

…クレマティス家に戻る?ルリシヤが?

ルリシヤがもし、クレマティス家に戻ると言ったら、俺はどうするんだ?

「…帰すのか?」

「それは、ルリシヤが決めることでしょう。俺がそうだったように」

「…」

…そうだな。

俺だって…あのとき、ルレイアがウィスタリア家に帰りたいと言えば。

どんなに辛くても、どんなに寂しくても、血の涙を飲んででも…ルレイアを、ウィスタリア家に送り出すつもりだった。

それがルレイアの意思なら、と。

だから、ルリシヤも…。

…例えどんなに引き留めたくても。

行かないでくれと、すがりついて叫びたくても。

俺達には、止めることは出来ない。

「…幹部全員の総意か?」

アイズもアリューシャもシュノも、同意したのか。

ルリシヤが帰りたいと言ったら、帰すと。

「えぇ。…アリューシャは、泣いてやだって言いましたけどね。最終的には、ルリシヤの判断に任せると言ってくれました」

そりゃそうだろうよ。

俺だって泣きたいのに。

「アシュトーリアさんも?」

「それでルリシヤが幸せになれるのなら、家族として、笑って送り出すと」

「…そうか」

ルリシヤの…幸せ…か。

ルリシヤがいなくなることによる俺達の寂しさに比べて、どんなに大切なものか。

それでルリシヤが幸せになれるのなら、俺達の孤独なんてどうでも良い。

…立場が逆だったら、同じことを言うだろうから。

「…分かった。ルリシヤがクレマティス家に帰りたいと言ったら…そのときは、笑って送り出そう」

「…えぇ」

ルリシヤを、笑って送り出したら。

その後俺はきっと、何年も、笑うことを忘れてしまうだろうな。

それでも、ルリシヤが幸福であるのなら、それで良い。

何処にいたって、俺達は家族なのだから。
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