The previous night of the world revolution5~R.D.~
予定通り、会議室に向かうアイズと別れ。

俺は、ホテル内に併設された屋外プールに向かった。

そこが、俺の今日の仕事場なのだ。

今回のターゲットは、ここにいると聞いている。

父親がこのホテルで会議に臨むときは、毎回ついてきて。

ホテルに併設されたこの屋外プールで、ビーチパラソルつきのサマーベッドに横たわり。

飲み物片手に、ゆったりと父親の仕事が終わるのを待っているとか。

…ほら、いた。

ブランド品ではあるものの、趣味の悪い黄色のワンピースをまとい、似合わない麦わら帽子を被り。

そばかすの浮いた顔を、べたべたと塗りまくったファンデーションで隠し。

身体つきはほっそりとしているが、バストだけは異様なほど膨らんでいる。

間違いない。

あれは、偽装だ。

ぺちゃパイがコンプレックスだったのか何なのか知らないが。

人工物を詰め込んでまで体積を増やすより、まな板の方がまだマシだと思うぞ。

揉み心地がな。

この時点で印象最悪なのに。

近寄ってみると、無駄に甘ったるい、妖艶とは程遠い、小娘みたいな香水の香り。

思わず吐きそうになる。

職業柄、色んな女を「経験」してきたが。

この類の女は、やっぱり好みではない。

仕事でなければ、今すぐこの女が寝そべっているサマーベッドを持ち上げて、プールに投げ込んでやりたいくらいだ。

だが、今回ばかりは。

こんな女が、ルリシヤの隣に立つなんて有り得ないので。

「…?」

俺の接近に気づいた女が、不審げに顔を上げると同時に。

「…こんにちは」

俺は、渾身の「営業スマイル」を浮かべて、彼女に近づいた。

最早、この時点で。

この女は、蜘蛛の巣にかかったも同然だ。
< 618 / 627 >

この作品をシェア

pagetop