The previous night of the world revolution5~R.D.~
「一体、どういうことですか!?」

クレマティス卿は、第一声に、血相を変えてそう叫んだ。

「何がですか?」

オルタンスは、事情を知っている癖に、しれっとして答えた。

これは腹立つ。

「ルリシヤの…弟の、貴族権復帰の件です!」

「あぁ…そういえば、そんな申請が届いていたような…」

「ちゃんと申請しています!正規の手段で!それが何故拒否されるんですか!」

「何故と言われても…。規則通り、厳正な審査をした結果ですから…」

あくまで、しらばっくれる気満々のオルタンス。

しらばっくれることにおいては、今のこいつに勝てる者はいないな。

隣で聞いていても、白々しくて仕方がない。

クレマティス卿、もっと怒っても良いと思うぞ。

「だったら、申請が通らないのはおかしいじゃないですか!今までの通例なら…」

確かに、今までの通例通りに審査したなら、落とされることはなかった。

ルリシヤ・クロータスに、貴族権を復帰させる許可を出していただろう。

彼が不当に奪われた貴族権を、彼のもとに返していただろう。

しかし。

「そうは言われても…。通例はあくまで通例であって…。必ずそうなると決まっている訳ではありません」

「っ…!」

「おまけに、ルリシヤ・クロータスは、ルティス帝国最大のマフィア、『青薔薇連合会』の幹部だと言うではありませんか」

以前から知っていた癖に。

オルタンスは、今回調査して初めて知ったみたいな顔をして、しらばっくれた。

あくまで、帝国騎士団と『青薔薇連合会』の裏の繋がりは、隠しておかなければならない。

「そんな危険な人物を、ルティス帝国の歴史ある貴族社会に戻す訳にはいきません」

「そ、それは…!貴族権を不当に奪われたことで、自棄になって道を踏み外しただけで…。だからこそ、貴族に戻して真っ当な道を…」

…よく言えたもんだ。

追い出したのは、お前なんだろうが。

内心舌打ちしながら、俺はクレマティス卿に言った。

「とにかく、ルリシヤ・クロータスの貴族権復帰申請は、却下する。これが帝国騎士団の答えだ」

「…!」

やっと、鳥籠から出て、自分の飛びたい空を自由に飛んでいるのだ。

それを再び捕まえて、鳥籠に戻すのは、あまりにも忍びない。

例え彼が飛んでいる空が、真っ暗な闇の空なのだとしても。
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