The previous night of the world revolution5~R.D.~
これが、ルレイアからの手紙の内容だった。

ルリシヤ・クロータスの貴族権復帰を、裏で手を回して阻止してくれと。

本来なら、多少の問題はあれど、彼の貴族権復帰は妥当なものとして、承認されていただろう。

だが、俺達が手を回して、その申請を却下させた。

特に違法な手段は使っていない。

彼の貴族権復帰に際し、障害になりそうな点…つまり、マフィアに所属している点…を、殊更に強調しただけだ。

『青薔薇連合会』で幹部をやっているような人間を、貴族に戻すのは危険だ。

この主張を強調することで、彼の貴族権復帰を否認した。

咎められる点を、徹底して咎めたに過ぎない。

別に書類を偽造してもいないし、誰かに金を渡して、嘘の証言をさせた訳でもない。

ルリシヤ・クロータスがマフィアで、『青薔薇連合会』の幹部であることは、紛れもなく事実なのだから。

何を言われようが、「だってルリシヤ・クロータスって危険人物なんだから、貴族に戻すのは危ない」と言い訳出来る。

違法な手段は一切使っていない。

このくらいのこと、他でもないルレイアの頼みなら、断る理由はない。

下手に断って、あいつの機嫌を損ねる方が、余程怖い。

ま、ルリシヤ・クロータスという人物の恐ろしさは身に染みて知ってるから、余計にな。

実際あいつを貴族に戻したら、それはそれで危険だろう。

だったら、まだ目の届く『青薔薇連合会』に入れておく方がマシだ。

クレマティス卿は、その後も色々ほざいていたが。

オルタンスはのらりくらりとかわし、しらばっくれ続けた。

結局、どんなに請願しても駄目だと分かったのか。

クレマティス卿は、憎々しげに俺達を睨んで、王宮を出ていった。

やっと帰りやがった。

全く面倒臭い奴だ。

「…これで、ルレイアへの義理は果たしたことになるな」

「あぁ…」

これで、死神の報復に怯える必要はなくなったな。

やっと枕を高くして眠れる。

やれやれ、とホッとしていたが。

「…」

オルタンスは、何故か無言で、しかも真顔だった。

…こいつ、今絶対気持ち悪いこと考えてる。

「…お前、今何考えてる?」

「これで、ルレイアの俺に対する好感度が上がったかもしれないと」

ほら見ろ。言わんこっちゃない気持ち悪さ。

そんなことで上がる訳がないだろ。

「馬鹿なことを考えてないで、仕事に戻るぞ」

「俺は真面目なんだが」

「お前はただの馬鹿だ」

きっぱりそう言ってやると、オルタンスは何故か、ちょっとしょぼーんとしていた。

…気持ち悪っ。

ともかく、これでルレイアの頼みは果たした。

「…あとは、あいつら次第だな」

まぁ、あいつらのことだ。

俺が心配しなくても、上手いことやっているだろう。
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