The previous night of the world revolution5~R.D.~

sideルアリス

──────…その、数時間後。




箱庭帝国に、一本の電話が掛かってきた。

ユーレイリーから、電話を掛けてきたのはルティス帝国の「彼」だと聞かされ、俺は慌てて娘をベビーベッドに戻し、受話器に飛び付いた。

娘には申し訳ないが、「彼」からの電話を後回しにする訳にはいかない。

この世に、あれほど機嫌を損ねることが恐ろしい人物がいるだろうか。

「はいっ…。お待たせしました、ルレイア殿…!」

電話の相手は、ルティス帝国にいる、俺の…いや、この箱庭帝国の大恩人。

ルレイア・ティシェリー、その人である。

『あぁどうも、忙しいところ済みませんね、ルアリス』

「…!」

俺はこの時点で、ルレイア殿と『青薔薇連合会』にただならぬ何かが起きたのだと悟った。

だって、ルレイア殿が。

…俺の名前を、間違えずに呼んだ。

つまり、ふざけてる場合じゃないってことだ。

何処の馬鹿だ。ルレイア殿を怒らせたのは。

この人を怒らせたら、一族郎党どころか、最悪国ごと吹っ飛ぶって、知らないのか。

「ど、どうしたんですか?ルレイア殿…」

『娘さんはお元気ですか?』

「あ、はい…。お陰様で…」

ベビーベッドに横になり、玩具を手に遊んでいる娘をちらり、と見る。

お陰様で、すくすく成長しております。

『そうですか…。期待してますよ、精々「美味しく」育ててください』

「…」

…頑張って、『不味く』育てよう。

『で、あなたの祖国の話ですけど』

「は、はい」

そっちが本題ですよね?

『元憲兵局派や、『愛国清上会』の残党に、動きはありませんか』

…何?

ルティス帝国にいるルレイア殿にとっては、元憲兵局派や、『愛国清上会』の動向など、どうでも良いことのはず。

それなのに、わざわざ電話を掛けてきてまで、確認するとは。

やはり、ただならぬ何かがあったのだ。

「…ルレイア殿。何があったんですか?」

ルティス帝国に危機が迫っているのなら、俺は出来る限りの援助をする。

ルレイア殿と『青薔薇連合会』にどれほどの恩があるかは、今更語るまでもないのだから。

ただ、ルレイア殿が俺の助けを必要とするかどうかは分からなかった。
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