The previous night of the world revolution5~R.D.~
『…ルアリス』
「…はい」
ルレイア殿は、声を低くして俺の名前を呼んだ。
真剣そのものの声だった。
全神経を集中させて、ルレイア殿の言葉を一言一句聞き漏らすまいとした。
今だけは、娘が泣き出しても気づかなかったかもしれない。
『本来は極秘事項です。帝国騎士団にも知らせていませんし、『青薔薇連合会』内でも、情報統制を敷いて、知っている者は限られています』
「…」
『それでも、あなたには話しておきます。俺とあなたの仲だと思ってるので』
…絶対に、他言は無用。
俺を信用しているから。天下無双たるルレイア殿が、他でもないこの俺を。
…ならば、俺はその信頼に応えなければならない。
「…何でも話してください。俺に出来ることなら、何でもします」
『なら、元憲兵局派と、『愛国清上会』の動向を逐次調べ、報告してください。彼らが、またルティス帝国に入り込んでる可能性があります』
「…!分かりました」
元憲兵局派と、『愛国清上会』。
かつてこの国を支配していた特権階級。
彼らは、箱庭帝国の現政権を好ましく思っていない。
今のところは大人しくしている…ように見えるが。
隙あらば現政権を打破し、かつての支配体制を取り戻さんと画策していることは、俺も知っている。
断じて、そんなことは許す訳にはいかない。
折角この国に自由を取り戻したのだから、それを奪わせてはならない。
その為に、日夜粉骨砕身している。
しかし…ルレイア殿の、この言葉。
間違いない。ルティス帝国で何かが起きたのだ。
『この際はっきり言っておきます。うちのアイズ…。アイズレンシアのことは知ってますね?』
「勿論です」
『青薔薇連合会』の次期首領と名高い、幹部組のリーダー格的存在であったと記憶している。
ルレイア殿のように、最前線で勇猛果敢に敵を切り裂くことよりも、後方で兵站や部隊指揮に従事する人だった。
その的確な指揮能力は、俺も感嘆するものがあった。
そして、その…。言い方は悪いが。
あの六人の中で、一番常識的な人だ。
いや、決してルレイア殿が非常識だと言ってる訳ではなく。
それよりも。
「アイズ殿に…何か…」
『…何者かに拉致、拷問されましてね。一命は取り留めたんですが』
「…!そんな…!」
自他共に認める『青薔薇連合会』の次期首領を、拉致、拷問した?
そんな馬鹿なことを。
『青薔薇連合会』に対する宣戦布告に等しい。
何処の誰が、『青薔薇連合会』を敵に回そうなどと考えるのだ。
かの組織にルレイア殿がいることを、知らないのか?
本物の死神さえ、及び腰で逃げるような人なのに。
『割と周到な…姑息な奴らでしてね。さながら『愛国清上会』の手管のような…』
「…」
ルレイア殿が、俺に連絡してきた理由が分かった。
ルティス帝国内の者なら、『青薔薇連合会』の脅威を知っている。
だから、彼らに手を出そうなどとは考えない。
でも、その『青薔薇連合会』に痛い目を見させられた、箱庭帝国の元憲兵局派達なら。
報復の為に、彼らに手を出すことは、充分考えられる。
他でもない次期首領たるアイズ殿を狙ったのが、その証拠。
いかに有能な前線部隊がいようと、後ろに控える作戦参謀がいなければ、部隊は烏合の衆と化す。
それを知っているから、アイズ殿を狙った。
もし本当に、箱庭帝国の人間がアイズ殿を拉致したのだとしたら。
俺は…一体どうやって、彼らに詫びれば良いのだろう?
「…はい」
ルレイア殿は、声を低くして俺の名前を呼んだ。
真剣そのものの声だった。
全神経を集中させて、ルレイア殿の言葉を一言一句聞き漏らすまいとした。
今だけは、娘が泣き出しても気づかなかったかもしれない。
『本来は極秘事項です。帝国騎士団にも知らせていませんし、『青薔薇連合会』内でも、情報統制を敷いて、知っている者は限られています』
「…」
『それでも、あなたには話しておきます。俺とあなたの仲だと思ってるので』
…絶対に、他言は無用。
俺を信用しているから。天下無双たるルレイア殿が、他でもないこの俺を。
…ならば、俺はその信頼に応えなければならない。
「…何でも話してください。俺に出来ることなら、何でもします」
『なら、元憲兵局派と、『愛国清上会』の動向を逐次調べ、報告してください。彼らが、またルティス帝国に入り込んでる可能性があります』
「…!分かりました」
元憲兵局派と、『愛国清上会』。
かつてこの国を支配していた特権階級。
彼らは、箱庭帝国の現政権を好ましく思っていない。
今のところは大人しくしている…ように見えるが。
隙あらば現政権を打破し、かつての支配体制を取り戻さんと画策していることは、俺も知っている。
断じて、そんなことは許す訳にはいかない。
折角この国に自由を取り戻したのだから、それを奪わせてはならない。
その為に、日夜粉骨砕身している。
しかし…ルレイア殿の、この言葉。
間違いない。ルティス帝国で何かが起きたのだ。
『この際はっきり言っておきます。うちのアイズ…。アイズレンシアのことは知ってますね?』
「勿論です」
『青薔薇連合会』の次期首領と名高い、幹部組のリーダー格的存在であったと記憶している。
ルレイア殿のように、最前線で勇猛果敢に敵を切り裂くことよりも、後方で兵站や部隊指揮に従事する人だった。
その的確な指揮能力は、俺も感嘆するものがあった。
そして、その…。言い方は悪いが。
あの六人の中で、一番常識的な人だ。
いや、決してルレイア殿が非常識だと言ってる訳ではなく。
それよりも。
「アイズ殿に…何か…」
『…何者かに拉致、拷問されましてね。一命は取り留めたんですが』
「…!そんな…!」
自他共に認める『青薔薇連合会』の次期首領を、拉致、拷問した?
そんな馬鹿なことを。
『青薔薇連合会』に対する宣戦布告に等しい。
何処の誰が、『青薔薇連合会』を敵に回そうなどと考えるのだ。
かの組織にルレイア殿がいることを、知らないのか?
本物の死神さえ、及び腰で逃げるような人なのに。
『割と周到な…姑息な奴らでしてね。さながら『愛国清上会』の手管のような…』
「…」
ルレイア殿が、俺に連絡してきた理由が分かった。
ルティス帝国内の者なら、『青薔薇連合会』の脅威を知っている。
だから、彼らに手を出そうなどとは考えない。
でも、その『青薔薇連合会』に痛い目を見させられた、箱庭帝国の元憲兵局派達なら。
報復の為に、彼らに手を出すことは、充分考えられる。
他でもない次期首領たるアイズ殿を狙ったのが、その証拠。
いかに有能な前線部隊がいようと、後ろに控える作戦参謀がいなければ、部隊は烏合の衆と化す。
それを知っているから、アイズ殿を狙った。
もし本当に、箱庭帝国の人間がアイズ殿を拉致したのだとしたら。
俺は…一体どうやって、彼らに詫びれば良いのだろう?