天使の詩(うた)〜divine wind song〜

「セシル、あなたがここにやってきたとき我々は衝撃を受けました。あなたのその歌声に」



あまりにも普段の指導官とはかけ離れていて、偽物ではないかと疑ってしまうほどだ。


セシルはその変わりように、何と言ってよいか分からず閉口していた。



「誰もがあなたを神の申し子と称える。あなたにはそれが苦痛だったということも教官の皆が知っています」



発せられた言葉に驚きを隠せなかった。



ようやくセシルの方を向いた教官はどこか悲しげな顔をしていた。

そして苦しげな、今にも消え入るそうな声で続ける。


「私たちがわからないとでも思っていた?私たち教官は多くの生徒を卒業させて、多くの神風を聞いて来たのよ。その私たちがわからないはずはない。あなたの苦痛に満ちた歌声が」



泣きたくなる。


今までのすべてがわかっていたのなら、すぐにでもやめさせてくれればよかったのに。


ひどい。ひどすぎる。



セシルは思わず抱えていた膝に顔をうずめる。


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