天使の詩(うた)〜divine wind song〜
「セシル、わたくしは怒っているわけではありません。以前にも成績の芳しくない天使は沢山いました。あなたの成績の悪さを指摘したいのではないのです。わたくしは、あなたの意識が問題だと思っているのです」
教官の言葉に呼応するかのように世界樹の葉が囁く。
「私は…アイドルになりたいんです。これだけは譲れません」
そう断言するセシルに教官は困り果てている。
「なぜそこに執着するのですか?あなたもそろそろ卒業しなければなりません。他の皆は転生の準備のため記憶を失いつつあるのですが、あなたにはまだ訪れていないようですね」
転生する魂は記憶を持ち合わせてはいない。
それは、天使になる大半が、不条理な世界から追放されてきた身ゆえ。
虐待や魔女裁判、生け贄など、世界の混乱が招いた被害者たちなのだ。
そのような者たちが来世では別の道を選べるようにと、前世の記憶は忘れるようになっている。