きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
 リデルは王家の派閥争いやテリオスの思惑よりも、ジェレマイア本人が今の状況を望んでいた事を、尋ねてきた。
 それはまるで、自分が彼女にとっては最優先に知りたい事なんだ、と教えてくれているようで。
 こんな時でも、ジェレマイアの自分勝手な心が弾む。


「俺は、本当は正妻が生んだ嫡子じゃない。
 本来は、爵位を継いではいけない男なんだ」




 コート伯爵家が、そうではない人間を、嫡子として届け出て、それを次期当主に決めた。
 それは嫡子以外を認めないと定めた祖国を欺く大罪。
 聞いているリデルの顔色も変わる。


「驚いただろう?
 もっと驚くのは、それを考えたのが、母親だとされる伯爵夫人で。
 後押ししたのが、賢主様と呼ばれた先代、俺の祖父。
 父親はそのまま当代のご領主様だが、本当の母親は先代が孕み腹として用意した名前も知らない女だ」  

「……」


「女は夫人と同じ金髪碧眼で、父親は髪も瞳も薄いブラウン。
 生まれた俺は奇跡的に、祖父と同じコートの銀髪碧眼だったから、祖父は狂喜乱舞したらしい。
 コート家の色を受け継がなかった父親は、そんな祖父と俺に挟まれて劣等感を拗らせて。
 俺の顔なんて見たくないんだろう、愛人と娘を作って、今も別邸に逃げてる」

「でも、でも……ジェレミーには何の咎も無いのに?
 それに、貴方の容姿はご領主様によく似ているのに?」

「……色なんて、ただそれだけでしかないのに、それに拘る人間は居るんだよ。
 祖父譲りの色と父と同じ顔。
 それだけで、俺の出生の事情を知っている誰もが口をつぐんだ」

「……医療部の父さんも、それを知ってて?」


 リデルの父デイヴは、本邸医療部の治療士だ。
 この秘密に関わっていると考えるのは、自然な事だ。
 ジェレマイアは、こうして彼女から聞かれなくても、そこははっきり伝えなくてはいけないと思っていた。


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