きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~

29 リデル

 デイヴから家庭教師による虐待の報告を受けた彼の父親は、指示を出していた母親には何も罰を与えなかった、という。

 淡々と、ジェレマイアは続けた。


「先代が生きていたら、母親は離縁されていただろうが、父親は母親を、多分愛している。
 だから、絶対に離縁はしないし、王都で好きにさせている」
 

「お互いに背を向けて夫婦を続けているあのふたりの共通認識が、俺はただ家を継ぐために作られただけの存在で、
『お前はわたしの息子じゃない、下等な女の血が流れている』と教えたのが、中等部入学前に同居することになった母親だった」


「本当は学院の寮に入りたかったのに、外聞を気にする母親に反対されて、父親が同意した。
 もう虐待こそされなかったが、母親と母の使用人達と暮らす6年と謹慎していた半年は本当にきつかった」


「その母親が俺に用意したのが、自分がずっと好きだった男の姪との婚約で、卒業後に婚約解消を申し入れる予定だった。
 他に好きな奴が居る婚約者とは、儀礼的にお互いに贈り物を誕生日にだけ交わしていたが、彼女からは毎年決まった万年筆で、書き心地はいいので、欲しがりのテリオス殿下に6本献上していた。 
 そして、俺の方はリクエストされた毎年発行される図鑑で、これまで6冊本屋から直送したが、全15巻発行予定なので、残り9巻は自分で購入するだろう。
 これ以上、婚約者については語れるものが何も無い」



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