きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
 それでも、リデルの手が助けてくれた、と言ってくれる彼の前で泣くなんて、わたしはずるい。
 わたしが弱さを見せたら、彼はますます我慢して、がんばって、強くなるしかないのに。
 あの頃は、知らなかった。
 だけど、今は知ってしまった。


「泣かないで、昔の話だ」と慌てたジェレマイアが差し出したハンカチーフで涙を拭いて、呼吸を整え、立ち上がる。
 そんな彼女を、ジェレマイアが見上げる。
 

「よくがんばりました。
 ジェレミーは、本当に強い子だった。
 遅くなってしまったけれど、抱き締めさせて」

 
 リデルは彼を見つめ、彼の頭を抱き寄せた。
 ジェレマイアが驚いて、息をのみ身体を強張らせているが、それに構わず。
 そのまま目線の下の銀色を撫で、その髪に口付けた。



「わたしを、貴方の妻にしてください」 

 最初にしてくれたプロポーズの返事に、
「本当に? 嘘でももう逃がさないけど」と言いながら、ジェレマイアはリデルの腰に手を回して、あっという間に膝の上に抱き上げた。



 並んでいたリデルの背を抜いて、彼はどんどん大人になり、遠い人になってしまった、と思っていた。

 だけど、今なら。
 目の前のジェレミーに手が届く。
 目線を合わせて、彼の頭も撫でられる。



 わたしも、貴方を守れるようにもっと強くなりたい。

 もう誰にも、貴方を傷付けさせない。


 ……それを誓う前に。

 リデルの唇は、素早いジェレマイアに塞がれた。


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