きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~

30 デイヴ

 幼い頃のリデルは、手の掛かる子だった。

 夜中に熱を出す事が多いので、直ぐに気付けるように。
 デイヴは、何度もリデルの寝室を覗いては、眠る娘の額に手を当てていた。

 彼は治療士だったから、病気から来る発熱なら対処出来るのだが、リデルのそれは彼の専門外だ。
 それで、何度も夜中に外れに住む老婆の家まで荷馬車を走らせて、リデルを診て貰っていた。


 真夜中であろうと、明け方であろうと。
「待っていたよ」と老婆はリデルを抱いて駆け込んで来るデイヴを、迎え入れた。
 まるで、予めこの時間に、デイヴが助けを求めてやって来るのを知っているかのように。


 リデルを治せるのは、領内では当時その老婆しか居なくて、謂わば命綱だ。
 年齢は分からなかったが、見るからに老齢の彼女はいつ亡くなってしまうか、先が不安で。


 他領在住の治療士仲間に、老婆のような存在が居るのか、問い合わせをしていたが、返事は芳しく無かった。
 また、たまに姿を見せる手伝いの女が弟子ではないかと思い、本人に尋ねてみたりしたが、彼女はただの使用人でしか無かった。


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