きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~

31 デイヴ

 イングラム騎士団の冬季軍事演習から戻ってきた日。

 ジェレマイアがリデルに往診させた事を知り。
 謹慎も反省もしていない、名ばかりの彼の反省部屋で一応釘は刺したので、デイヴは急いで帰ろうとした。
 ところが、共に部屋を出たリーブスが、デイヴにこれから別邸を訪ねて欲しいと言ってきた。 
 本邸で解隊式が行われていた最中に、別邸から使いが来たと言う。
 
 
 演習に見学参加していた領主のイングラム伯爵は、先程まで一緒に居たのに、何故今更呼びつけられるのか。
 早く帰りたいが、デイヴは雇われの身で、伯爵は彼の雇い主である。
 命じられれば従う他はなく、内心では『勘弁しろよ、疲れてるんだよ』と思いながら、別邸へと赴いた。


 ジェレマイアに対して行われていた虐待を、告発した時の対応に納得出来ず、デイヴはそれからご領主を敬えなくなった。
 だが、勿論それを表に出すことはない。
 人前では『ご領主様』『旦那様』と言うが、心の中では『伯爵』と呼んでいる。

 伯爵に背けば、イングラムを出るしかなくなるし、そうなればリデルが発熱した場合、あの老婆に診て貰えなくなる。
 加えて、ジェレマイアが何事もなく無事に成長出来るよう見守りたいと思っていたから、おとなしく頭も下げる。

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