きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
 イングラムを出ての6年間、帰省した彼から
「本当にリデルを娶りたい、会わせて欲しい」と毎回訴えられ、その度にそれをのらりくらりと躱し続けてきた。


 ジェレマイアが本気だと、幼い頃から彼を知るデイヴには、分かっている。
 だが、娘は平民だ。
 いくら、彼が真実の愛だと叫んだところで、正式な妻にはなれない。


 現状で次期領主の地位から外されても、ジェレマイアが嫡子である事に変わりはなく、正妻は貴族階級の娘になる。

 もしジェレマイアの愛人という立場を、リデルが受け入れたとして。
 普段親しくしている治療士デイヴの娘であっても、その血が庶子として、コート家に入るとなれば。
 調査能力に長けたリーブスは徹底的に、改めてデイヴとリデルの身元を調べるだろう。


 それがあるから、デイヴはジェレマイアに、あの子を渡せない。


  ◇◇◇


 走り去る馬車を見送って、リデルは初めてそこに立つ父親に気付いたのか、慌ててこちらに来た。


「ごめんなさい、遅くなってしまって。
 迎えに来てくれたエラと、つい話し込んでしまったの……
 これから、直ぐに夕食を作るから待ってて」


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