きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
「エラとは今度の休みに会うから、その時に返す事になってるの」

 また、リデルは父に嘘をつく。


「分かった、御礼も一緒に渡しておけ」

 借りたものはさっさと返せ、と言われるかと思ったが、デイヴはあっさりと引いてくれた。 

 
「今日は、何時ごろ帰るんだ?
 時間が合えば、久しぶりに外で食わないか?」

「あの、昨日話した中央治療院の先輩に、中央で始めたという新しい看護法を教えて貰ったの……
 それで、朝礼で皆に提案してみようと、思って。
 今週はもしかしたら、勉強会で遅くなりそうな気がする」

「……なら、今週は一緒に夕食を取るのは無理かもな。
 仕事なら仕方無いが、あまり根を詰めるなよ」

 仕事を理由に、父にまた次の嘘をついてしまう。 
 根を詰めるな、と身を案じてくれる言葉に胸が痛い。 


 昨日の披露宴会場での席が、中央治療院に勤めるジョイス先輩の隣だった、と夕食の話題に出していた。
 その時に先輩に新しい看護法を教えて貰ったのは本当だ。
 朝礼でそれを提案しようとも思っているのも、本当で。
 だが、仕事の後の勉強会は、嘘だ。

 南地区の治療院では、その類いの勉強会は午前診と午後診の間の昼休憩に行う事になっている。
 治療士達も看護士達も、終業後は早く帰りたい派が多いからだ。



「嘘をつくときは、本当の事を混ぜると良いんだって」

 学生の頃、エラから教えられた極意は、自分には関係無いと思っていた。
 だが、今の自分は……


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