きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
 自然に口から出ていく嘘に、自分が1番驚いているリデルには、デイヴがどんな表情をしているかさえ、見えていなかった。
 ましてや、その意味など。



 帰りに迎えに行く、と彼が言った。

 そのために、リデルは小さな嘘をひとつひとつ積み重ねていく。


  ◇◇◇


 今日の仕事が終わり、治療院で用意されている白衣を脱ぎ、リデルは手元の鏡を見ながら、唇に紅を引いた。
 その小さな手鏡と口紅は、昨日エルザから贈られたもの。
 
 それを目ざとい同僚の看護士メイに見つかって、からかわれた。


「どうしたの? 鏡持ってたんだ?
 口紅を塗るリデルを初めて見た」

「……もうそろそろ、年相応になろうか、と思いまして」

「なるほどなるほど、大人になったねー」

 わざと、ふざけた口調で答え、メイと笑う。
 言い訳をするより、その方がその場で笑い合うだけで、会話は終わる。


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