きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
 自覚は無かったが、そんなエラの視線が気になるのか、食い気味に見えたジェレマイアが少し距離を取るように、身体を後ろに反らした。


「ボランティア部、です。
 専攻関係無しで活動してて、放課後とか週末とか集まって、孤児院で活動してたんです。
 そこから親しくなって、リデルを家まで送ったりしてるみたいです」

「……そうか」


 ジェレマイアの返事は間が空き過ぎていて、その心情を思うと、聞いているこちらが辛くなるくらいだ。

 普段親しくしているデイヴには聞けなくて、それでも今まで話したこともないエラを追いかけてくる程に、リデルの男友達が気になるのか。

 しかし残念ながら、これ以上クラークについて語る言葉を、エラは持っていない。
 彼がどうにかしてリデルの方から告白させようと躍起になっている噂は、若様の耳に入れない方が良い、という判断はついた。


 話し終えて頭を下げたエラの瞳に、ジェレマイアの拳が固く握られているのが見えた。
 


「……そうか、急いでいるだろうに、呼び止めて済まなかった」


 本人は無意識なのだろう。
 そうか、と繰り返したジェレマイアは、帰るエラとは反対方向に歩き出した。



 幼少期から領民にも優秀だと言われ続けた若様が、自分とは同い年なのに不器用な年下の少年のように思えて。

 去っていく彼の後ろ姿に向けるエラの眼差しは、憧れから生暖かいものに変化していた。


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