きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
 逸る気持ちを抑え、外に出ると。
 仕事帰りの馬車や人々が行き交う通りを、左右確認してから渡る。
 そして、治療院とは通りをへだてて斜め向かいの本屋へと入った。
 リデルはここで、ジェレマイアと待ち合わせをしていた。

 彼には『1人で通りを横切らせたくない』と意味不明な事を言われたが。
 治療院という仕事柄患者がいる限り、はい終業と追い出すことは出来ない。
 その日の患者次第で退勤時間が変わってしまうので、髪と顔を隠していても目立つ彼を、関係者出入口の側で待たせる訳にはいかなかった。
 時間を潰せて、男性1人で入っても注目をされない。
 本屋は、そんな条件に合った場所だった。

 今日は就業時間を10分遅れて閉めることが出来たので、それ程待たせていないのに。
 お馴染みのマントを羽織って、店内なのに深くフードを被り、地理関係の書棚を眺めている彼の背中を見ると、申し訳無さに眉が寄った。
 

「お待たせ、ジェイ」

 外で会う時は、そう呼ぶと、リデルから彼に提案した。
 ジェレミーだと、聞こえた誰かにジェレマイアと結びつけられてしまう可能性もある。


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