きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~

33 ジェレマイア

 第2王子のテリオス殿下は、人前では穏やかな王子様だ。
 取り巻きと呼ばれる、4人の高位貴族令息達とジェレマイアの前でも、その表の顔は崩さない。


 貴族学院の王族専用特別室で過ごす昼休み。
 その日の会話でも、王子様の偽りは遺憾なく発揮される。


「瞬間毛染め薬剤?」

 その情報を提供した公爵令息のゴードンに、同じく公爵家のブライアントが確認する。 
 それに頷くゴードンだが、彼の目線はテリオスに固定されている。

 ゴードンの中では、筆頭公爵家に生まれた国王陛下の甥御様である自分は、同じ爵位であっても、ブライアントとは格が違うとなっていて。
 まともに相手をするのはテリオスだけ、と決めている。
 皆と話している風を装っていても、テリオスの反応のみを注視している。
 一方の観察対象のテリオスと言えば、相変わらずの微笑みを浮かべているだけだったが。


「それと、今までの毛染め薬はどう違う?」

 具体的に聞いてきたのは、侯爵家のウィルコックス。
 彼は遊び人で、毛染めと聞いて興味津々だ。


 貴族の子息達、特に高位貴族の令息達は、夜遊びにのめり込む者も多い。
 娼館や賭博場に出入りする彼等は、自分の身元を隠したいと粗末な服を着たり、わざと徒歩で赴くなど、商人や豪農の息子、といった小金を持つ平民の息子を装う。 

 それ程遊び慣れておらず、そのくせ我が物顔に振る舞うので、高位貴族の馬鹿息子だろうと、夜の連中にはお見通しで、会計は吹っ掛けられているのだが、本人達はスマートに遊んでいると思い込んでいる。
 当然のように調子に乗り、その仮装自体が面白くて、皆が競うように自分を偽れるアイテムを欲していた。


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