きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
 毛染めもその内の1つだが、流通している薬剤は染め上がるまでに時間がかかり、その上、色が抜けるのにも時間がかかるので、学生である彼等には手の出せない代物である。
 その商品に『瞬間』という文字が付けられているのであれば、これは聞き逃す事は出来ない、と。 
 真面目なケイン以外のブライアント、ウィルコックスの両名がゴードンの話に飛び付くのも無理はない。
 2人に続きを促されて、咳払いをひとつしてゴードンが話し出す。
 
 勿体ぶりやがって、とジェレマイアは笑いそうになるが、自分はただの伯爵家。
 ゴードンとは、出来るだけ関わらないようにしているので、おとなしくしている。


 その薬剤は、これまでのとは違い、使う直前に髪を洗い、乾かしてから専用ブラシにふり、髪をとかせばたちまち色が変わるという。
 何より素晴らしいのは、髪を洗えば、色が直ぐに落ちるということらしい。
 その説明を聞いた2人が興奮している。


「本当か! 何処に売ってる?」

「お前、持ってるのか?」


 一見、友人として扱っていても、ウィルコックスは侯爵家だ。
 お前と言われて、ゴードンの顔が不快気に歪むのをジェレマイアは見て、そのまま視線をテリオスに移せば。
 彼もまた、面白そうに従兄弟の顔を見ていた。
 王子様は毛染めの話になど興味はなく、ただ取り巻き達の反応を楽しんでいるだけだ。


「これは北大陸の商会から父が特別に貰い受けた物。
 どうぞ、殿下。
 貴方に是非差し上げろ、と父から預かって来ております」

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