きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
 ◇◇◇


 ずっと持ったままの、北大陸から来た瞬間髪染め薬剤は、今。
 ジェレマイアの役に立った。


 ジェレマイアの赤毛を見たリデルの顔が見れただけでも、テリオスに感謝する。
 おどけて見せれば、気を悪くした彼女に鉄槌を下されたけれど、そんなのは子猫にじゃれつかれたようなもの。
 ジェレマイアは、リデルになら何をされても構わない。


「行こう」とだけ言って、手を握り。
 彼女と共に店を出る。
 ただ、それだけでも幸せだ。
 絶対に、この幸せは手離さない。


 改めてそう決意するジェレマイアは、今日の午前中、先触れも無く本邸に現れた父親を思い返す。
 本邸なのだから、当主である父親が先触れを出す必要は無いのだが、これまでは必ずそれはあった。

 それ故、唐突な父親の行動には不審感しかなかったが、案の定。
 悪い予感というものは当たる。


「お前の縁談が決まった。
 ウエストヒルのベアトリスだ。
 今週健診を受けさせて問題がなければ養子にして、夏にお前と婚姻する。
 ベアトリスを伯爵に立て、お前はこのまま変わらず、領地繁栄に励め。
 おとなしく3年過ごせば、カーターの娘を愛人にして構わない」


 ウエストヒルは、コール家の遠縁で。
 ベアトリスは、確か貴族学院の1年下で、今年6月に卒業する。
 親戚の娘だが言葉を交わした事はなく、どんな顔だったかも、よく分からない。


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